理想怪奇「死竜魔」 (ページ27)

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第四章　【冷酷なる竜の召使】ページ27

しかし、その拳はあっさりとかわされたのだ。それも人の動きとは思えないほどの素早さで。これではまるで……───

「ようやく確信できたわ、あんたの能力。勘って案外当たるものね」
「……貴様、『自身の能力で俺の能力と同じ力を取得した』のか！？」
「そう、大正解。竜人族にしては規格外すぎる力だと思ったのよね、祠の最終結界を破壊するなんて。あの結界を破壊できるのはせいぜい神族クラスぐらいだと思っていたけど。
　でも、竜人族でさえ“本来ならば”破壊は出来なかった。それを貴方の能力が証明したのよ」

　祠を破壊する時、彼は能力を使っていた。能力を行使して初めて破壊を可能にした。故に、

「アンタの能力は『自身の強化』！自身の身体能力を向上させ、結界を物理的に打ち破った！
　だから、私もその能力にあやかったの。これでお互いフェアに決闘が出来るわね」

　……しかし。
　ルナディはそれを聞くと徐に笑い出した。花坂は警戒する。

「まさかとは思ったが、やはり所詮は人間だったか。しかし、俺の能力を一部看破出来たことは褒めてやろう。まさかあの行動だけで俺の能力の一部を理解するとは、人間も捨てたものではないらしい。
　ならば、この決闘で俺の力の全てを見せてやろう。それを冥土の土産として死ぬが良いッ！」

　両足のホルダーから食器用のナイフを一本ずつ手にしたその瞬間、彼の金色の瞳は銀色に鈍く光る。ナイフが4本、8本と増えていくのだ。そのナイフを花坂に投げ入れる。強化された肉体で投げ飛ばされているナイフは豪速で襲いかかる。
　しかし花坂自身もまた身体能力の強化をしている為、なんとか避ける事を可能にしている。高く飛んで回避すれば、通っていったナイフは地下の壁に深く突き刺さる。ただの食器用ナイフでは到底出ない威力である。
　ナイフだけではない。男は次にフォークを増殖させて投げてくる。刺す事に特化しているフォークは流石に食らえばまずいであろう。さらには大皿、小皿、ワイングラスと食器を武器の様に投げ飛ばしてくるのだ。

「食器が次から次へと……！あんた、物は大切に扱いなさいよね！」
「どうせ直せる」
「なんかアンタのこと唐突に嫌いになったわ。
　アビリティ発動、『フラワーバブル』！」