第四章 【冷酷なる竜の召使】 ページ26
[九ノ月・十五日 二十時五分ごろ]
時は遡り、月城想魔が教会に入って間もない頃。その地下ではすでに花坂夢乃が侵入していた。
彼女はこの教会のシスター、スフィア・イースターと対峙していた……が、
「スフィア、その女は俺が相手をする」
その一言で花坂の顔が険しくなる。
相手は何を隠そう、花坂家に襲撃を仕掛け、代々守り抜いてきた宝玉『夢の珠』を強奪していった男だったのだから。
「貴様は地上にいる鼠の駆除にあたれ」
「御意のままに、我が主の守護者よ」
花坂はスフィアを見送る。そしてこの近空間には1人の女と1人の竜人族の男のみが残った。
「守護者、ねぇ。ってことは、彼女が言っている『我が主』の右腕あたりかしら」
「貴様に答える義理はない。どうせ死ぬのだ、冥土の土産にもならん無駄話よ」
「あらそう。そんでもって、あんたは意地でもここを退かないって?」
「ならばどうする」
「決まってるでしょ、」
夢乃が結界札を起動させる。決闘を申し込まれた男は顔色変えずに鼻で笑う。
「ただの人間が竜人族に叶うはずもなかろう。わざわざ貴様の万能な能力を消費して傷を癒してまで挑む程のことか、無駄死にも良いところだ。
だが、喜べ人間。貴様の血肉はお嬢に気に入られた。よって貴様は贄として迎え入れられることだろう。お嬢の為にその命を使われる事を誇りに思って逝くが良い」
「ずっと前からあんたのその傲慢な態度について言いたい事があったの。
いちいち規模のでかいこと言って自分を強く見せたがってるの、丸わかりすぎて余計弱く見えるわよ」
瞬間、怒りに顔を歪ませたその男、ルナディ・アルデバランは夢乃の正面にまで瞬間移動して彼女の顔目掛けて右拳を突き出した。男はこれで彼女に攻撃が通ると思っていた。種族としての強さと自身の能力の強さを相手と比較し、勝つことを前提としていた。
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作者名:ミンミンゼミ31039 | 作成日時:2018年12月8日 22時