特級呪術師が護衛につくそうです。３ (ページ1)

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88話ページ1

その日は少し雰囲気が違うなと感じた。
　怜は午前の授業を済ませ、午後に待ち受ける任務の山に覚悟を決めつつ寮の共有スペースにあるソファでゴロゴロとしていた。
　要はアイスコーヒーを飲みながらぼうっとテレビを眺めている。
　昨日から雄英では職場体験が始まっており、各生徒がプロヒーローの元へと向かうため護衛はいらないだろうという結論に至った。
　そのため、今は雄英の護衛任務は一時停止となり、普通の任務に赴いている。
　しかし、量が多い。
　以前も説明したかと思うが、上層部のねちっこい嫌がらせのせいで毎日の任務の量が尋常ではないのだ。
　なので午後の事を考えると頭痛を覚えるのだが、その分の給料はしっかり払われるため、なんとか気力が持っているという状態だ。

「………要、暑い」
「…アイスコーヒー淹れたら？」
「無理、苦い」
「お子ちゃまだもんな」

　わざとらしくケラケラと笑う様子に苛立ったが、今は動くのさえ面倒だ。なので殴るのは勘弁してやる。
　部屋は冷気で満ちているし、今もしっかり冷房は稼働しているので外にいるよりかは中にいた方がいい。
　久しぶりの何もない日なので空いた時間で特訓でもしていようかと思い立ってはいたが、外に出たらそんな考えはすっかりなくなった。
　おかげで今はテレビを見ながら寛いでいる。
　休暇だし。重要任務もないし。夜に少し入っているけど、軽いものだし。と自分に言い訳を聞かせながらポテトチップスの袋を開けようとした時だった。

「怜、要」
「あれ、先生。どうしたんですか」

　夜蛾が少し眉間に皺を寄せながら立っていた。なにか怒っているわけではなく、ただそういう怖い顔なのだ。と、口に出せば怒られるが。
　手に何やら資料のようなものを持ちながら夜蛾は怜と要を見た。

「明日の交流会についてだが……」
「え、交流会？明日！？」

　怜はそう声を上げる。要が面倒そうに目を細めていた。

「うそ、来週じゃないの？！」
「明日だ。全く、だから予定は確認しておけと…」
「それで、何で先生は来たんすか」

　ぐちぐちとお説教が始まる前に要が話を進めようと口を挟んだ。怜は内心親指を立てる。長い説教を聞かずに済んだ。
　夜蛾はまだ何かを言いた気に顔を顰めていたが、一つ咳払いをすると神妙な顔つきになった。
　少し空気の変わった室内に怜と要は夜蛾が言葉を出すのをじっと待っていた。