ミニうしさせ、拾いました。【浦島坂田船】

24.Before ページ24

Aに拾われる前の記憶は、不思議と何一つ覚えていない。


考えても考えても、


思い出せるのはダンボールの中で目が覚めた時に、

さかたの寝顔が目前にあったことだけだ。




そのせいで、

たった今「おじゃましましたー」といって家から出ていった彼女＿＿姫の事も思い出せない。


『俺は彼女の事をどこかで見たことがある』


ということ以外は、微塵も思い出せないのだ。


この気持ちを抱いているのは、俺だけではないはず……


「うらー、タピオカのむ？」

「…！？のむのむ！！！！」


タピオカをわざわざ1つずつ6個に切って、ミニタピオカにしてくれるAに「ありがとう」、と目いっぱいの笑顔を送る。


俺はタピオカを受け取った後もずっと姫のことを考えていた。



あいつは、誰だ。

ーーーーーー


難しい顔をしてタピオカを飲んでいるうらたんを横目に、俺も考え込んでいた。

恐らくうらたんも同じ事を考えているのだろう。


姫の正体について、だ。


やっぱりどこかで見たのあるような、ないような。

Aには気のせいだと言われたが、俺は物覚えのいい方なのだ。

が…記憶が欠落してる気がする。

今までこんなことは無かった。


Aに拾われる前のことで覚えているのは、

ダンボールの中でまーしぃが変な寝言を並べていた事だけである。

……記憶を消された？

だとしたら、なんのために？

どうやって。

だれが。


……………まぁいいか。そんな深く考えすぎてたら、人生楽しくないわ。

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