穏やかな仮面【緑】

21 ページ22

…









阿「夜分遅くに失礼します……阿部です」









扉を開ければ上はパーカー下はスウェットのラフな姿の阿部が申し訳なさそうに立っていた。









(なんだ、この捨てられた子犬みたいな顔は……)









阿部は俯き気味で目だけこちらに向けボソボソと話した。









阿「是非とか言っちゃいましたけど、








よくよく考えたら相当烏滸がましい行為だなと……








やっぱり大丈夫です……」








ゆっくり閉められそうになった扉を制し、







『私が食べて欲しいんです、









作りすぎちゃったので手伝って下さい』









と阿部の目をまっすぐ見据えて言った。









阿「気まで遣わせてしまって申し訳ないです……」








『お米も多く炊いちゃったんです、




早く入ってください冷めちゃいますから！』








阿部の腕を引っ張って半ば強引に家の中に連れ込む。








『なんで急にそんな恐縮してるのかよく分かりませんけど、








こっちが勝手に阿部さんのこと心配してるだけなんで気にしないでくださいね』









ソファに座らせ、少し上から見下すような目線で阿部に言った。







すると、阿部はやっといつもの穏やかな表情に戻った。









阿「Aさん、ありがとうございます。」








『とんでもないです』








机に筑前煮とご飯を並べ、阿部の横に腰かけた。








『どうぞ、召し上がれ』








阿「頂きます……！」








阿部は1口頬張ると、









阿「んまぁっっ……！！！」









目をキラキラさせながら、あっという間に食べ終えた。








阿「誰かが作ったご飯なんて久しぶりで……、








それにすごく美味しかったです。









Aさんごちそうさまでした！」









ニコニコ笑顔の阿部。









少し大胆な行動だったが食べてもらえてよかったなと心の底から思えた。






…

22→←20

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す