半分 ページ4
3時間かけて絵を描いた。池と桜の絵。モトキ君が眩しい笑顔で私の絵を好きだと言ってくれた。嬉しすぎてどんな顔をすればいいのか分からなくて、思わず下を向いちゃった。
私自身を好きだと言ってくれた訳ではない。なのにこんなに嬉しい。
少しでも私を、私の絵を覚えてほしくて、描いた絵の左下にサインをしてモトキ君に渡した。ちょっと困ったような顔をしてるモトキ君。困らせたい訳じゃないの、ごめんね。
《あげる。私の絵を好きって言ってくれたから》
ごめんねモトキ君、半分本当で半分嘘なの。私を覚えていてっていう少しの下心もあるの。知られたら幻滅されるかも…だから言わないけど。
受け取ってくれて、手話でありがとうとお礼を伝えてくれた。少しぎこちない感じが微笑ましいと思う。でも私のために覚えてくれたっていうのでもう充分だ。
私もありがとうと手話をするとモトキ君は首を傾げた。ありがとうと言ってくれたお礼なんだとスケッチブックに書いたらどういたしましてじゃないの？って。
確かにそうなんだけどね。でもありがとうって言わせてほしい。嬉しかったから。
そして、今日一番伝えたかった事。
《敬語は使わないで》
モトキ君はちょっと悩んでから頷いてくれた。よかった、断られたら暫く落ち込む所だったよ。
《これからもよろしくね、モトキ君》
《うん、よろしくねAさん》
また少し、君と近付けた気がした。
…
モトキ君がわざわざ家まで送ってくれる事に。まだ一緒にいたいから、なんて言われたら期待してしまうからその言い方はやめてほしかった。
手を差し出してくれた事もそう。期待してしまう。もしかしたら同じ気持ちなんじゃないかって。
ここでもまた下心が出てしまった。私がモトキ君に触れたくて手を握ったんだ。意外と男らしい手にドキドキして顔が熱い。まだ家に着かないで、もう少しモトキ君と手を繋いでいたい、そんな思いで帰路に着いた。
歩いてたら当然だけど、いつかは着いてしまう。あの公園からの帰り道で一番早く感じた。もうちょっと一緒にいたかったなぁ。
マンションを見上げたモトキ君はスケッチブックに家族と暮らしてるのかと書いた。家族…家族かぁ…。
《一人暮らしだよ。お父さんもお母さんももうこの世にいないから》
両親は数年前に立て続けにこの世を去った。お父さんは心筋梗塞。お母さんは膵臓癌。2人はそういう運命だったんだと割り切る事で何とか乗り切れたんだ。
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瀧(プロフ) - mikaさん» そういうコメントくださると本当嬉しいです、ありがとうございます。私の作品が誰かの需要になってるんだと思うだけで頑張れます。でも最近更新ペース遅くなってすみません…。 (2019年11月12日 0時) (
レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
mika - 尊い... (2019年11月11日 8時) (レス) id: 590e6520a9 (このIDを非表示/違反報告)
mika - 更新されないと思ってたら移行してた笑 (2019年11月6日 16時) (レス) id: 590e6520a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀧 | 作成日時：2019年10月30日 0時
