4本の薔薇～another story～【Fischer’s】 (ページ20)

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モトキくんは中学の頃、私のことが好きだったらしい。

それを聞いた時は本当に驚いたし、これからの接し方に迷った。

でもいざ会ってみれば好きだったと言われる前となんら変わらない態度だった。

私の幻聴だったのかな？ってくらい本当に変わらない。

モトキ「何、どうしたの？」

「あ……いや、何も」

ついモトキくんを見てたら私の視線に気が付いた彼が声をかけてきた。

……ダメだ、私の方が意識してる。

忘れてって言われたのにな。

モトキ「俺ちょっとコンビニ行ってくるねー」

マサイ「おー、いってら」

モトキくんが出ていってマサイくんと2人きり。

何か色々限界になってマサイくんに思いっきり抱き着いた。

いきなり抱き着いたのにちゃんと受け止めてくれた。

マサイ「うぉ、何、どした？」

「私はダメな奴だ……」

マサイ「え？」

「……ちょっとだけこのままいていい？」

マサイ「ちょっとと言わずいつまででも大歓迎ですよ」

「あはは、やったね」

私に何かあったのは分かってるはずなのに、深く聞かないマサイくんの優しさに涙が出そう。

でもこればかりはマサイくんには言えないよ。

というかメンバーには誰にも言えない。

マサイくんを抱き締める力を強めてもマサイくんは私の頭を黙って撫でるだけ。

あー、もう私どうすればいいんだろう……。

いや、モトキくんの言う通り忘れるべきなんだとは思う。

けどさぁ……。

「……ねぇマサイくん」

マサイ「ん？」

「大好きです」

マサイ「俺は愛してますね」

「……付き合いたての頃は照れてたくせに」

マサイ「そりゃ何回も言って言われれば慣れるよ」

モトキくんのことは誰にも言えないし、それこそ墓場まで持っていくことだけど。

私、モトキくんの気持ち嬉しかったんだ。

あの頃の私をマサイくんだけじゃなくてもう1人好きになってくれてたなんて、思いもしなかったから。

だからやっぱり忘れたくない。

モトキくんの気持ちをなかったことにはしたくない。

だって普通に悲しいじゃん。

好きだった人に、自分が好きだったことを忘れられた、って。

だから私は忘れないよ。

モトキくんが忘れることを望んでても。

いつかモトキくん本人が忘れても、私は忘れない。

忘れたくない。

なんて、モトキくんにも言えないな。

忘れてって言ったじゃん！って怒られるわ。

声を大にしては言えないけどさ────

────モトキくん、好きになってくれて本当にありがとう。