79-夢から現実へ ページ29
この腕に抱いて寝たはずの温もりがない。
まだ閉じようとする目蓋を無理矢理こじ開けるとこちらに背を向けた姉がベッドに座っていた。
腕を伸ばし、服を指で掴む。
ちゃんと掴めたことにほっと息を漏らす。
『ロー、起きた?』
「…………ねぇ、さま…」
『…泣いてるの?』
夢と同じ、温かい手が頬を撫でてくれた。
目元を拭うように動く指に泣いていたのかとまだ働かない頭でぼんやり考える。
そうだ、あの夢を見た後は大抵起きると涙が流れていた。
情けないと思いつつ、どうやったってあの夢を見た後には泣いていた。
しかし今日の夢はいつもと違っていた。
いつもは姉の腕の中に飛び込もうとする前に目が覚めてしまうのに、今日の夢はちゃんと抱き着くことができたのだ。
『怖い夢見た?』
「……あァ、…父様と母様とラミが、いなくなる夢…」
『!!』
「いつもは…姉様も……いなくなる、けど…さっきの夢は……ちゃんと、姉様に抱き着けた…」
『…そっか』
「……姉様、」
『わっ』
服をぐい、と引っ張りAをベッドに引き込んだ。
昔はAの方が身長が高かったので体格差的に抱き締められる方だったが、いつしか逆になり、ローがAを抱き締める方に。
少し下にあるAの頭のてっぺんに鼻を押し付ける。
昔から変わらない落ち着く匂い。
「…もう、俺の側を離れないでくれよ」
『分かってるよ』
「……ん」
『え、二度寝するつもりなの?
ロー、もう9時過ぎてるよ』
「寝始めてからまだ6時間くらいしか経ってねェだろ…」
『それだけ寝れば十分でしょ。
ほら起きた起きた』
ローの腕の中から脱出し、腕を引っ張って体を起こさせた。
欠伸をしながらも起きる気にはなったようだ。
「……姉様、そのつなぎ」
『うん、着てみたの。どう?』
「あァ、似合ってるよ」
ローは初めてAがハートの海賊団のクルー達が着ているつなぎを着ていることに気付いた。
立ち上がったAを頭のてっぺんから爪先まで見て1回、深く頷く。
「思ってた以上に姉様がクルー達のつなぎを着てるのを見るの悪くねェな」
『お気に召したようでよかったよ。
それじゃ私先に食堂に向かってるから、ローもちゃんと朝ご飯食べに来るんだよ』
「…ガキじゃねェんだから言われなくても分かってる」
『ふふ、楽しみにしててね』
?マークを頭上に浮かべたローに後で分かるよ、と言い残して部屋を出た。
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エースファン - 最初から拝見してます!とても面白いです。更新頑張ってくださいね、応援してます (2021年10月3日 21時) (レス) id: e23982275e (このIDを非表示/違反報告)
KOMA(プロフ) - 素敵な話です!応援してます! (2021年10月3日 16時) (レス) @page39 id: 2f9b06972b (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ - ローぷうちやんがハート海賊団のつなぎきてみたいだつてなかまになりたいじやないかな (2021年9月28日 18時) (レス) id: 3ad59a45e6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ - ぷうちやんありがとううれしいよつなぎきたいならろーにたのんでみたら (2021年9月28日 18時) (レス) id: 3ad59a45e6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ - わたしはただローのあねさまとしてして大好きなおとうとローまもりたいだけ (2021年9月17日 17時) (レス) id: 3ad59a45e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀧 | 作成日時:2021年9月9日 23時