検索窓
今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:30,456 hit

ページ4



私がそう言えば、またぐすんぐすんと泣き出すA。
奇天烈な君も泣き虫な君も、全部全部私のためだと思ったら愛おしくて仕方がなかった。

でも実は、Aが死んだフリをした本当の理由は私の本心を知るためなんかじゃなかった。


「すぐる、本当は私ね、不安だったのもあるんだけど…何よりも君に改めて気づいて欲しかったの。
命の尊さを。身近な誰かに居なくなられる側の怖さを。
そして…君がもっと自分の命を大切にしてくれればいいのにって。君の幸せが私の幸せなんだってもっとちゃんと知ってくれたらいいのにって。
君が私のことを生きて欲しいって想って大切にしくれてるなら……それくらい傑だって、私を含めた沢山の人に生きて欲しいって想われてるし大切にされているんだってことに、もっと気づいてくれたらいいのにって。」


────だから死んだフリをしたの。


Aは大粒の涙を浮かべながらも真っ直ぐ私だけを見つめて、そう言った。
私はそんな彼女を心底馬鹿だと思った。でもそんな心とは裏腹に私の瞳からはポロポロと涙がこぼれた。
最初はAのあまりの馬鹿さに笑い泣きでもしたのかと思った。けどすぐに違うと気づいた。
私は…心の底から自分で自分を“生きてていいんだ”と思えることがただ只管に嬉しかったのだ。

結果的にAに止めて貰ったから良かったものの、一度人の道を外れかけた私に生きる価値などあるのか?何にせよせめてもの償いで今度こそこの命を捨てででも呪術師としての責務を全うしよう。いつもそう考えて、彼女の言う通り自分の命なんて二の次三の次だった。
そんな心の虚しさを埋めてくれたのは、いつだってAの笑顔だった。それだけじゃなく…Aは、私に生きてて欲しいのだと泣き出すのだ。

こんなにも幸せに囲まれてて、死ぬだなんてもう出来やしないじゃないか。…全く君ってやつは本当に私をダメにする、罪な女だよ。

ああもう。もっと欲張って、生にしがみついて、みっともなくてもいいから君と幸せになりたい。
これが、私の紛うことなき本音だった。


「ねぇA、さっき私は“君にずっと笑って生きていて欲しい”って言ったよね?あれ、取り消してもいいかい?」

「え…!?」

「“君とずっと笑って生きたい”、じゃあだめかな?」

「ッ、ダメなわけないでしょー!傑の馬鹿!!」


馬鹿だなんて馬鹿に言われたのは酷く心外だったから、私はその煩くて可愛らしい唇をそっと塞いで黙らせた。


リ→←だ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (280 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
94人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ような - Happy birthday!!! (2022年2月3日 23時) (レス) id: 663ab8d7b2 (このIDを非表示/違反報告)
aaa - 夏油様ハピバ!!ホントにこういう世界が現実だったらいいのに... (; ;) (2022年2月3日 19時) (レス) @page3 id: 94f6373e66 (このIDを非表示/違反報告)
るきー流季ー - こ、こんなにも短編で終わり方が素敵な物語ってこれ以外にありませんよ!?あと誕生日おめでとうございます、夏油様〜!!どうか、どうか、呪術廻戦最後では羂索から解放されてハッピーエンドを迎えてほしいっす・・・ (2022年2月3日 15時) (レス) @page6 id: d8f15dd322 (このIDを非表示/違反報告)
みたらし(元三日月) - 最高すぎます! (2022年2月3日 13時) (レス) @page5 id: 122f030fb9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - うわ〜〜!最高でした!!お誕生日おめでとう傑☺️💕 (2022年2月3日 13時) (レス) id: c9636ac8db (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おかかのおにぎり | 作成日時:2022年2月3日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。