離反を防ぎたいが故に夏油傑を洗脳してしまった。

１０． ページ11

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脳家に双子が生まれて10年目の春。

対呪霊用の思考操術のみを持つ兄・優也。
対人用の思考操術のみを持つ妹・A。

この世で最もむごく不条理な殺し合いが始まった。


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『ねぇゆうや、お願い。───死んで。』


“思考操術”──“自刃”
相手の思考を操り“死にたい”と思わせる。そうすることで相手に自ら死を選ばせる。

相手を殺さなければ自分が死ぬ。
私はこの術式で最愛の片割れ…優也を手にかけた。
なのに優也は私の事を恨むどころか、あまりにも優しすぎる笑顔で私の頬を撫でた。


『この生き地獄を、辛い選択を、お前一人に押し付けてごめんな…。皆は双子は凶兆だって言うけど、俺はAとずっと一緒でよかった。この生き地獄から俺を救ってくれて……ありがとう。』


そう言って、優也は自分で自分の腹を刺して死んだ。


優也はこの家で生きるにはあまりにも善人すぎたのだ。そしてそんな彼は私には眩しすぎて、でもそんな風になりたいと思って密かに憧れを抱いていた。


私にはこの生き地獄の中ただ一つ夢があった。

それはいつか優也をこの生き地獄から救い出すこと。誰よりも優しい心を持つ優也にはこんなしがらみだらけの穢れた世界ではなく、いつか普通の職や家庭をもって真っ当に生きて欲しかったのだ。
そんな夢を、願いを、実現するためだけに地獄のような鍛練にもひたすら耐えて耐えて耐えて…貪欲に強さを求めていった。

そう、優也が私にとって唯一の希望の光だったのだ。


だからなのだろうか。優也の命が消えゆく時、自分が殺したくせに「死なないで」だなんてあまりにも矛盾した言葉が出たのは。

私だって…優也を殺したくなかった。
でも私は彼の片割れだから分かっていたのだ。優也は私を殺して生きるより、私に殺されて死ぬことを望んでいるのだと。
それと同時に善人すぎる優也に私の死を一生背負って生きさせるのはあまりにも酷だと思った。

だから私は優也を殺す(救う)選択をした。


そして私は優也の対呪霊用術式も使うことが出来るようになった。でも逆に元からの私の持っていた対人用術式を使わなくなった。…もう人を呪いたくなかったから。

なのに、あのとき。私は優也と傑を咄嗟に重ねて、動揺のあまり傑を呪ったのだ。



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轟轟と燃えるファミレスの店内。


「“優也”、儂は宿儺の指何本分の強さだ？」
「甘く見積って8.9本分ってとこかな。」


そこに呪霊と共にいる、
頭にツギハギがある男は一体───？


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