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PINK(tkhk) ページ8

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｢おつかれ｣

｢おつかれ、｣

そう言い合ってグラスを合わせれば
ｶｺﾝっと涼しくて短い音が響く

グラスに入ったワインは赤と白で
まるで交わらないみたいな
そんな印象を与えてくる

舞台で共演してからずっと変わらない俺らの関係

もとから凄く仲が良いというわけではないし、
辛うじて俺ができたのは
"高木"から"雄也"呼びに変えることくらいで。

｢ぷはぁ、うんめ〜…
ワインってさ馬鹿みたい飲めちゃうよね｣

｢はぁ、酔っ払うなよ？めんどくせぇんだから｣

｢えぇ、いいじゃん。たまには。ね？｣

雄也とのサシ飲みは、だいたいコイツが
めちゃくちゃ酔っ払って求めてきて
簡単に一夜をすごして、
起きる前に俺が家から抜け出す

これがもはや定番化しつつある。

ただ一つ、不本意なのは
コイツが何一つ覚えてないってこと。


｢…でさぁ、ふふ、｣

｢こら、お前もうやめとけ、｣

｢大丈夫。知ってるでしょ？俺酒強いって｣

…どの口が…。

明日の朝には何も覚えてないくせに

次の現場では知らない顔でいつも通りのくせに

なんで、俺だけが覚えてて

こんな、好きにならないといけないんだよ、、

もやもやした気持ちを抱えながら
他愛もない話をして穏やかに時間だけがすぎていく

そして、

｢光くん、そろそろでよっか｣

｢え、あぁ、まって、｣

グイッと残りのワインを飲み干して

｢…ねぇ、帰んないで、｣

甘えたように俺の服の裾を掴むんだ。

｢…ばか、タクシー捕まえんぞ｣

否定も肯定もせず、その手を振り払い会計を済まそうとすると「もう支払われてます」とのことだ。ったく、毎度毎度いつ払ってんだか…

片手を上げて捕まえたタクシーに乗り込み

｢すいません、えーと、｣

高木の家の住所を伝えようとしたら

｢1番近くのホテルまで｣

横から聞きなれた声が遮る。

『はい、かしこまりました』

タクシーが動き出してしばらく固まった思考


｢は？｣

やっとでた声は間抜けそのものだったけど

｢なに？｣

隣の高木は余裕そうにそう言って

｢おまえのいえじゃ、｣

｢家でもいいけどさ、今日は"帰って欲しくない"って言ったでしょ？｣

｢…え、お前まさか、｣

｢俺、怒ってんだからね｣

「んな、」

｢あ、運転手さんここで。お釣りいらないです｣

｢ちょ、、｣

グイッとひかれた手はそのままネオン煌めく建物へと俺を誘う。

こんなの、いつもと違うじゃんかよ

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