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Side Yuri
「座って」の声に素直に従い、ぼんやりと慧ちゃんを眺める。つい先程まで二人が抱き合っていた場所は、まだその熱が残るよう妙に温度が高い気がした。
僕が買ってきた品を取り出していた慧ちゃんが、ココアがある事に気づき、缶を手にしてしばし見つめた後、おもむろにそれを開ける。
ざばざばと目分量でココアを作った慧ちゃんは、マグカップに口をつけ「あっま！」と顔をしかめた。それを見ながら、宏太が雄也の為にココアを作っていた姿を思い出す。
料理など一切しない宏太が、少しずつお湯を足しながら丁寧に作っていたのも、雄也への愛情だったのだ。
「…で、どうすんのよ。」
僕の分のマグカップを手渡してくれながら、もう一度慧ちゃんがそう尋ねた。
どうにもならない事だと誰より知っていそうなものなのに、容赦がない。
でもきっと、慧ちゃんは見抜いてる。
それでもまだ、雄也を諦められない事を。
宏太とキスする雄也の姿に、僕が体を熱くしていた事も。自分もあんな風に雄也を抱きしめたいと、心の奥底であさましく願っている事も。
「だって… どうしたらいいの…」
全て見抜かれていると思えば、いっそ気が楽だった。誰にも言えない僕の本心を、慧ちゃんは決して口外したりしない。雄也にも宏太にも全て隠したまま、何も知らないフリを貫き通してくれている。報われない片想いを面白がっているだけだとしても、僕には味方に思えた。
「…侑李は女の子とつき合った事あるの？」
「ないよ、知ってるでしょ？」
「はは、16から雄也一筋だもんねぇ？」
僕の隣に座って、心底可笑しそうに慧ちゃんが笑う。そんな風に笑われても仕方がないと思える程、初恋をこじらせている自覚はあった。
たまに、僕にも好意を告げてくれる女の子がいた。その気になれば、新しい恋を始められるチャンスだってあったのだ。
それでも、僕の心は雄也しか望まず、どこがどう好きなのかももうよくわからないまま、雄也だけを願い続けている。
「…勉強してみる？」
ふいにそう言われ、訳がわからず慧ちゃんを見上げた。向けられた笑顔はいつもの柔らかなものだったけれど、途端に体に緊張が走る。
「な、なにを…？」
「侑李が勉強しないと、雄也怪我するよ？」
脅迫めいた言葉に「じゃあ勉強する！」と反射的に答えれば、慧ちゃんは満足げに笑う。
「頑張る子は大好きだよ」と僕の額に落とされたキスは、甘い甘いココアの香りがした。
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みもたま(プロフ) - コメントありがとうございます！お店の開店に超豪華なお花を届けて頂いたような恐れ多い心境です。閉店にならないように頑張らねばー！（限られた品しかない、マニアックな店ですが…） (2019年11月8日 23時) (
レス) id: f91d6da0d1 (このIDを非表示/違反報告)
Purple Swallowtail(プロフ) - 移行おめでとうございます！高校時代も含め今のみんながどんな風になっているか楽しみにしてます！大ちゃんも登場(^ ^) (2019年11月8日 18時) (レス) id: 73ae1288ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みもたま | 作成日時：2019年11月8日 18時
