日常 ページ1
嵐のようなヴィドの事件から、1週間。
「リヴァイさん、報告書です」
私は驚くほど、日常を取り戻していた。
＿＿＿ただ。
あの日リヴァイさんに抱き締められたのが、どうも少しだけ気になっている。
彼に抱き締められたのは、デノンさんとコットさんを失ったあの日以来の事。けれど、あの日の時とはまるで、違うような気がした。
あの日よりももっと優しくて、まるで＿＿＿
大切なものを、包み込むような＿＿＿。
私は自身の脳内に浮かんだ思考を取っ払うように、首を横に振った。もうヴィドの事は終わったこと。もう仕事に切り替えなくては。
そう、思うのに。
気になって仕方がないのだ。
＿＿＿リヴァイさんが、
どうして、私を抱き締めたのか。
リヴァイ「…何だ、聞きたいことがあるならはっきり言え」
さすがは5年間共にしてきた上司とところだろうか。悩みの元凶が自分であるとは知らずに聞いてきたリヴァイさんを、思わず睨んだ。
「別に、何もないですから」
そう言い返すと、一瞬だけ彼の目に影が落ちる。
リヴァイ「…そうか。＿＿俺はあるがな」
ゆっくりと上がってきて、その瞳と目線が交わる。
あぁ、やっぱり、この瞳に捕えられると。
＿＿まるで動けない。
彼らしくない回りくどい言い方と、その瞳、そして何となくむず痒い空気に、心臓がきゅうと縮まる。
「何ですか…」
聞かない方がいい。きっと、私のためには。
そう、私の心の奥が伝えてくる。
それでも聞かずにはいられなかった。心臓の音が、耳のすぐ間近にあるかのようにうるさい。息が出来なくなってしまったかのように苦しい。
リヴァイさんが口を開きかけたとき、ドアの扉が3回、ノックされた。
ハンジ「リヴァイ、入るよー」
ハンジさんのその陽気な声に、空気が緩む。
張り詰めていた身体のせいでどっと疲れと倦怠感が押し寄せてきて、安心のため息を吐く。
＿＿＿やっぱり、おかしい。こんな空気、今までに無かった空気だ。
「…私、先に戻ります」
無理やり笑顔を張り付けてリヴァイさんにそう言うと、目を伏せて「あぁ」と静かに言われた。
ハンジ「あれ？A戻るの？」
「…私がいた方がいいですか？」
ハンジ「あ、ううん。そうじゃないけど…」
ハンジさんをすり抜けて逃げるように廊下に出る。
もう肌寒い季節がやってきており、広い兵舎の廊下はすっかり冷え込んでいた。
「…まだ、心臓がうるさい」
私は身体に残った熱を冷ますように、
廊下を歩いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
むささび(プロフ) - 一気に読み進めてしまいました。とても面白かったです。番外編ではなく、是非続編として本編のストーリーで夢主ちゃんが活躍＆キャラと絡むのか拝見したいです！一先ずはお疲れ様でした！また拝見出来る日を楽しみにしております。 (6月26日 17時) (
レス) @page35 id: 2279a97b0b (このIDを非表示/違反報告)
みみみみみ(プロフ) - フォールさん» ありがとうございます！完結まで見届けてくださり嬉しいです🙇♀️これからもがんばります、、！！ (2023年3月16日 16時) (レス) id: d7f9a920c5 (このIDを非表示/違反報告)
みみみみみ(プロフ) - ゆるさん» コメントありがとうございます！とても光栄です🙇♀️これからも頑張ります！😭 (2023年3月16日 16時) (レス) id: d7f9a920c5 (このIDを非表示/違反報告)
みみみみみ(プロフ) - らなさん» ありがとうございます…！とても嬉しいです😭これからも頑張ります💪 (2023年3月16日 16時) (レス) id: d7f9a920c5 (このIDを非表示/違反報告)
フォール(プロフ) - 完結おめでとうございます！！！素晴らしい作品だったので無事完結したことを嬉しく思います！！すっっごい面白く、素敵な作品で、あっという間に最後まで読んでしまいました！これからも頑張ってください！！！ (2023年3月15日 23時) (レス) @page35 id: eb505c02be (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年10月22日 22時
