story5:知らない君 ページ7
キヨは家に入ったあと、何故かテレビやスマホ等に向かうことなく食事をする私の姿をただ見守っていた。
「…さっきは、ごめん」
あんな態度を取ってしまったにも関わらずこうして私の家に来てくれるキヨに、有り難さと申し訳なさを感じていた。
キヨ「あ？別に気にしてないけど」
キヨは表情を変えることなく、そう言った。
＿＿＿知ってる。キヨが誰よりも”そういう人”だと言うことくらい、私が1番。
でも、高校でのキヨは。
どこか知らないキヨのような気がして。
「…ねぇ、いつからあんなに人気だったわけ？」
キヨ「俺もさ、分かんないんだよね。何となく高校に入ってあいつらといたら何となくそうなってたっていうか」
「…教えてくれても、良かったのに」
ぽつりとつい本音を呟くと、キヨはきょとんとした顔でこちらを見た。
キヨ「いや、俺自分で言ってたらかなり痛いじゃん」
キヨが中学生になって、私より先に制服を着て通学する彼を見た時、早く私も中学生になりたいと、そう願った。
ようやく中学生になったと思えばキヨは受験時期で、私に構う暇なんてなくいつの間にか高校生になっていた。
フジ、ヒラ、こーすけ。その3人の名前を聞くことが多くなって、私の知らない学校の、知らない先生の、まだやってない教科の話をするキヨに追い付きたくて、この高校を受験した。
そうしたら入った先には、私の知らないキヨがいた。でも今目の前にいるのは、ちゃんと＿＿
”私の知ってるキヨ”だ。
「…ふふ、確かにそうかもね」
私が笑うと、つられてキヨも笑った。
冷たかった空気が、一気に温かいものへと変わる。
キヨ「そういえば今日フジがさぁ＿＿」
「え！そうなの！？」
それからは、2人とも柔らかい雰囲気でいつも通り下らない話をすることが出来た。
空間も、ご飯も、胸も、
とても温かかった。
母「ただいま〜」
いつの間にか話し込んでいると帰ってきた母に、キヨは慣れた様子で挨拶をする。
キヨ「あ、こんばんは〜」
母「キヨくんAの面倒見てくれてありがとう」
キヨ「いえいえいいんですよ。じゃあそろそろ」
「あ、私玄関まで行く」
立ち上がったキヨについて行き、玄関で靴を履く姿を見守る。…こんなに足も、大きかったっけ。
キヨ「じゃあ、…明日からは無視すんなよ？」
「…うん」
そう答えると、キヨはわしゃわしゃと私の頭を撫でて微笑み、帰っていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 159人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年10月22日 0時
