灰色に染まった青春の余韻【ky】 (ページ3)

今日:21 hit、昨日:0 hit、合計:8,631 hit

story1:再会ページ3

(2022年、現在)

東京の空気は、淀んでいてたまに疲れる時がある。

北海道の空は高くて、空気が綺麗で、美味しくて。
東京みたいに都会では無い街だけど、好きだった。

最初上京してきた時は、苦労したっけ。

そうそう、そもそも北海道はゴキブリが出ないからゴミの扱いが甘くて後悔したりとか。
雪が少し降っただけで電車が止まるし、おまけに道が北海道と違って凄く滑ったりとか…。

そう考えれば今はもう、慣れたものだ。

空を見上げて、手を翳す。

こうするのは、昔からの私の癖だ。

こうしていると昔は、いつも隣から細長い腕が伸びてきて、こう言うのだ。

”相変わらずちっちぇえな～、Aは”

＿＿＿＿昔のことを、思い出してしまった。

私は翳していた手を元に戻して、溜め息を吐く。
出来れば思い出したくない事だ。

…そう言えばあいつも、上京したんだっけ。いつかおばさんが言っていた気がする。

空から目を離して、スマートフォンを手に取り何の意味もないネットサーフィンを始めると、何やらとあるネット記事の題名が目についた。

＿【今女子高生に人気のゲーム実況者ランキング】

ゲーム実況に興味があった訳じゃない。
私が目についた理由は、その後の文章だ。

＿【一位を独占したのは＿＿】

「＿＿＿キヨ…？」

私の胸がどくんと鳴った。

あいつの懐かしいそのあだ名と、重なったから。

…そんなわけない。YouTubeを始めるなんて話、私は何も知らないし聞いていない。そもそも、”キヨ”
何てあだ名の人はこの世に何人いると思っているんだ。

たまたま。そう、これはたまたまなんだ。
私が昔のことを思い出したから、たまたま”あの”
キヨだと、思ってしまっただけ。

いつの間にか開いていた記事に張られていた動画のリンクを、震える手でタップした。

違うという願いも希望も、イヤホン越しに聞こえてきた声に、打ち砕かれる。

声は、大人になってる。
YouTubeだからか、テンションも高い。
それでも、

喋り方も、笑い方も、間の置き方まで、
全て、一緒に育ってきた私にはわかる。

「はは…」

口から、乾いた笑いが漏れた。

まさか再会が、画面越しになるなんて。

…YouTubeを始めたなんて、私が知っていなくても当然の事だ。言うわけがない。私なんかに。

だって彼を突き放したのは、私なんだから。

久しぶりの彼の声によって嫌でも思い出される記憶の渦に、私は身を委ねた。