天使の育て方。 (ページ1)

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幸せ１つ。ページ1

俺が中学生の頃の話だ。

忘れもしない中学2年の夏。
あの日は50年だか、70年だかに1度の流星群が降り注ぐ日なんだったそうだ。

ロマンチストな母は張り切って丘へと出かけていった。せっかくなんだから、一緒に行こうと誘われたのだが、俺はめんどくさいと断った。

流星群にはたいして興味はない。

ブルームーンだとか、彗星接近だとかでニュースになったときも。月は言うほど青く見えなかったし、彗星もどこだかわからなかった。

今回もどうせそんなもんだろう。

それに、こんな蒸し暑い夜に丘なんかに行ったって、蚊の餌食になるだけだ。

何十年に1度の流星群なんか降るんだっったら、好物の塩キャラメルでも降ってくればいい。

塩キャラメル。

あれだけは飽きない、俺の体は塩キャラメルで出来ていると言っても過言ではない。普通のキャラメルも勿論好きだが。あの甘いだけではない、塩に引き締められたあの絶妙な甘さがたまらなく好きなのだ。

話が逸れた。

まぁ。こうして本題である流星群を忘れてキャラメルの話に夢中になれる。それくらい、俺は流星群に興味がなかった。

のだが、友人から興奮気味に電話があり。絶対見ろ、見ねぇなんてもったいない!!とウザイくらいに勧められ、俺は渋々とベランダへと出ることになった。

今思えばこの電話が無ければ、あの出会いはなかっただろう。

クーラーのために締め切った窓を開けると、思いの他涼しかった。
そして、目に飛び込んだ光に俺は言葉を失った。

闇空一面に散りばめられた眩い宝石達を背景にに光の尾を引いて思い思いの方角へと飛び回る星々。

絶え間なく流れゆくそれは今まで見た景色の何よりも美しすぎて。ただただ眩い空を見上げていた。

暫くして、首が痛くなって。そこで俺はようやく友人と通話中だと思い出した。

「……すげぇ｣

『だろ!!だから見た方がいいって』

「あぁ、ありがとう金田一｣

『そうだ、せっかく大量に流れてるんだから何か願い事でもしてみたらいいんじゃねぇの。こんだけあれば、どれか１つぐらいは聞いてくれるだろ』

俺にしては珍しく素直に言葉を口にすれば、友人は満足気にそんな提案をした。

コイツはデカい図体に反して案外ロマンチストなところあるからな。

「そうだな。塩キャラメルが降って来るよう頼んでみるか｣

『うわ無謀……』

暫く談笑した後で通話を終えた。
そして、そのノリの延長で

「塩キャラメル降ってこーい」

そう星々に向かって小さく唱えた。