調査兵団の右翼と左翼＿season2【進撃の巨人】 (ページ43)

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◆ ページ43

(リヴァイside)

言葉を失い、唇を震わせているAは、ただじっと何かに耐えるように、その大きな瞳に俺を映している。

「……心外です。私は5年間リヴァイさんの隣でずっと戦ってきて、同じ景色を見てきて、少しは信頼されてるって思ってたのに…違ったんですね。

隣にいるって、約束したのに…私がいなくなっても、リヴァイさんは平気なんですか？あの約束は、ただあのときの私を宥めるための

＿＿嘘なんですか？」

怒りと、失望と、悲しみが混ざったその声色。次第にその瞳には大粒の涙が浮かび、俺を睨み付ける。

「…失礼します」

そのまま身を翻して部屋を後にしてしまったAの小さな背中を、追いかけることは出来なかった。

ひとりきりにしてはだだっ広い空間で、小さく舌打ちが響く。

俺が泣かせた。あの小さな身体を震わせた。Aと出会ってから初めての事だった。

リヴァイ「くそ…っ」

Aがいなくなって平気なわけなんてない。あの約束だって、本心からのものだ。迷わず調査兵団を選んでくれと素直に言えれば、どれだけいいことか。

＿＿＿ただ、そんな約束をしたがためにAを縛り付けてしまっていることに、気付いてしまった。

Aは自分自身を救ってくれた俺に対して、そして兵団に対して大きすぎる感謝の心と忠誠心を抱いている。そのためならば自分の心臓を本気で捧げようと考えているだろう。

だがAは、本当はシーナの壁の中で幸せな暮らしをするはずだった人間だ。両親はいなくたって、少なくとも仲間が喰われて散り散りになっている所も、力を持っているからこその責任も、たくさんの身体の傷だって、負うことはなかった。

Aには、笑っていてほしい。
あいつの瞳には、綺麗なものだけ映ってほしい。

＿＿＿なのに、
Aの隣を、譲ることが出来ねぇ。

とことん、中途半端で意気地無しの男だ。
その結果泣かせた。大人げない言葉をわざと選んだ。Aが、傷つくかもしれないと分かっておきながら。

数日前の夜、Aに問うた時＿＿
後悔していないと、Aは答えなかった。

Aの中にある後悔の欠片を、拾い集められるチャンスが今なのだとしたら。俺はAが遠くへ行ったって口出しをする権利は、何一つ無いだろう。

分かっているはずなのに、どうしても晴れないこの胸の奥のもやもやに、見ないふりをするように目を閉じた。