調査兵団の右翼と左翼＿season2【進撃の巨人】 (ページ37)

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◆ ページ37

『エルヴィン団長、お久しぶりです』
『リヴァイ兵長！この間は＿』
『ハンジ分隊長、この間の研究結果ですが＿』

さすがは兵団幹部、といったところだろうか。あっという間に人が寄ってきては去っていく。頭が混乱してしまいそうだった。

『この間の壁外調査でも、素晴らしい討伐数だったのだとか。ぜひ今度の調整日に食事でも＿＿』

見知らぬ憲兵が熱い瞳で語りかけてくるのを温い笑顔で流しながら、徐々に距離を取っていく。知らない男性と距離が近いのは得意ではない＿というより身体が拒絶反応を起こす。

話の切りどころはいつか。そんなことを探っていると、私を呼ぶ声が聞こえた。

『あら＿＿＿Aちゃん？』

あまりにも親しげなその呼び方に、胸騒ぎがした。声の主を捉えるとやはり、貴族らしい貴婦人が私を見つめて佇んでいる。

話していた憲兵に断りを入れ、その貴婦人の元へいけば、『久しぶりね！』と声を弾ませられた。

記憶を呼び戻そうと貴婦人を注視して＿＿ようやく気がつく。貴族時代近所に住んでいた上流貴族のベッカー婦人だった。

「ベッカー婦人、お久しぶりです」

『本当、お久しぶりねぇ。私も皺だらけになってしまって、お恥ずかしいわ』

ベッカー婦人は口許を手で隠し優雅に微笑んだ。

『今は調査兵団の幹部にいるんですってね。貴方の活躍は耳にしているわよ。何とも凄い兵士だとか』

「いえ、まだまだです」

『ご両親の事、とても残念だったわね。レナルド夫妻は私もお世話になっていたから、残念だったわ』

両親の名前を出され、心臓がドクンと脈打つ。
残念＿＿？私の両親が病気だと知っておきながら、何の援助もしてくれなかったのに。

つい俯いてしまったその刹那、嫌な視線が私に集まっているのに気がついた。

『ベッカー婦人ったら、放っておいて差し上げればいいものを』
『兵士しかやることがなかったんでしょうね。お可哀想に』

ひそひそと周りの貴族から哀れみの目で噂されているのが耳に入り込んできて、俯いた顔を戻すことが出来なかった。

リヴァイ「＿＿Aは、きっての能力を持っている優秀な兵士だ。確かに両親の事は残念だが、だからこそAは兵団に入ることが出来た。＿＿その恩恵を受けるのは誰だ？」

頭上から聞こえてきた上司の声に、顔をあげる。

『あ、あらリヴァイ兵士長殿…
貴方達兵士にはいつも感謝しているわ』

最高の皮肉を受けたベッカー婦人は、気まずそうに微笑みながら逃げるように去っていった。