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”あの日”と言えば普通の人は皆、ウォール・マリアの壁が破られた日を指すのだろうが…
私にとっての”あの日”は、地獄のあの壁外調査の日＿＿つまり、デノンさんとコットさんの命日。
私の事を恨む対象でありながら仲間と認め、私を庇い死んだ人たちの命日だ。
私は左胸のポケットから、デノンさんのボタンを取り出す。
＿＿5年間ずっと、こうして一緒に戦ってきた。
彼の心臓は、私が背負う必要があるから。
リヴァイ「…墓には、行けたのか」
「いえ、…いい報告が出来るまでは行かないと、自分の中で決めているので」
リヴァイさんは静かに「そうか」と呟いて、紅茶を啜った。
リヴァイ「お前がここに来てから
＿＿もう5年も経つのか」
独り言のような静かな呟きだった。
…5年間。
私達は同じ景色をずっと、1番近くで見てきた。
仲間達が死んでいく姿も、壁が壊されて逃げ惑う人々も、巨人に恐れおののき泣き出す人々の姿も。
「…そうですね」
リヴァイ「＿＿後悔しているか？」
さらりと問われたその質問の中には、大切な意味が孕まれている気がして。
「…どうしてそんなこと聞くんですか。後悔なんて、1番嫌いな言葉でしょう？」
リヴァイ「…あぁ、そうだな」
”何となく”で答えてはいけない質問な気がした、のと、素直に後悔していないと言えるほど、私はまだ強くはなかったがために、答えを濁した。
調査兵団に入らなければよかった、なんて、1度も思ったことはないが。
ただ、後悔していないか、と聞かれれば
つい言葉に詰まるのは、何故だろうか。
何となく部屋に気まずい空気が流れ、私は「そろそろ自室に戻ります」と立ち上がった。
リヴァイ「…部屋まで送る」
「大丈夫ですよ、すぐそこですし。リヴァイさんもお疲れだと思いますからゆっくり休んでください」
部屋を後にし、廊下に出る。
ほとんどの燭台はもう消されているにも関わらず、廊下には冷たい光が入り込んでいた。
「…満月」
ふと、いつしかリヴァイさんとした屋上での約束を思い出す。
私は、彼をがっかりさせないくらいに強くなれているのだろうか。
彼の補佐として隣にいても良いくらい。
「…後悔していないか、何て、こっちの台詞です」
粒やいた言葉は、宵闇へと溶けて消えた。
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作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年9月29日 19時
