3話 魔獣の主 ページ4
人ならずもの。
もしくは人になりきれなかったものだろうか。
口を噤んだはいいものの、消えることのない、目の前に確かに存在する異常。
瞳孔が複数存在し、糸で縫われた瞼や口。
手には大きな鉈を持ち、鋭い歯を剥き出しにして辺りを伺うように彷徨っていた。
「……………………なに…あれ…？」
「待って、あいつだけじゃない」
見渡してみると低木と同じ高さほどの、よく文献で見かける合成獣(キメラ)のような生物も多く跋扈している。それらは血にまみれていてゆらゆらとうごめいていた。
「…あれは…魔獣だ」
「その通り！」
キチの言葉を遮るように何処かで聞き覚えのある甲高い声が木霊する。その声に釣られるように辺り一帯の魔獣の視線はこちらに集まった。普通は声の主に誘導されるものなのでは無いだろうか。しかしその答えは直ぐに判明した。
「あ、お前はハニメ王国にいた………えーと…………ディスカッション！！と…あとループ！」
「も〜！僕の名前はディアボロス！！あとこっちはルーガだよ！！ったく…折角名前を名乗ってあげたのに下等生物はなんでこうも知能が低いんだか」
夥しい数の魔獣の奥に寡黙な青年と幼稚な悪魔が立っている。ルーガとディアボロスだ。
「『これ』は貴方達の仕業なんですか？」
レイは目を細め鼻に手をあてがう。言葉にしなくとももう分かる、先程までの赤黒く変色した植物、それはここにいた生命の血を吸った物だということが。そしてそれをやってのけたのはこの魔獣共だということも。
「煩いなぁ……嫌いな人間共を幾ら殺そうが僕達の勝手でしょ？ねぇルーガ」
「…………」
ルーガは静かに濃紺の髪を揺らして頷いた。
「そしてそれは………君達も同じだよ」
「…………………"獲物"を、狩る」
呼吸を急ぎ涎を垂らしていた魔獣は突如として少年少女に襲いかかる。
「おっ、おい待ってよ！！君らの目的はなんなんだ！こっちの味方ではないとして………生命の神の手下なのか？！」
奥へと消えていく二人をアクアが呼び止めようとするが、彼らは止まらない。
「僕達は………【どっちにもなりきれない】よ」
そう言い残して彼らは見えなくなってしまった。
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作者名：ミミック | 作者ホームページ：https://twitter.com/neidangel
作成日時：2018年8月4日 21時
