凡人、狩る。 4 ページ15
「殆どの人は狩りなんてしたことないと思うし、生き物を殺すのだって躊躇う時代だよ。まぁあれだ、私が異常なだけ」
「異常? 狩りがか?」
「私たちの時代では、お店でスライスされてたのを買うのが当たり前だからね。魚も切り身になってるのが殆どだし、子供なんかは切り身が泳いでるって思ってた子もいるくらい。それなのにわざわざ野生動物を狩るのは野蛮だっていう人間の方が多かったよ。────私の両親も、多分そうだった」
親から見た私は、きっと気味の悪い子供だっただろう。
愛情がなかったわけではないがやはり困った顔をよくしていたし、扱いにくいこどもだったと思う。狩猟を始めた頃なんか女の子なのにって止められたし、私のすることを理解してはなかったと思う。
やめろと強く言わないだけで、いや、言えないだけで。
きっと嫌だっただろうに。
「色々あって私は生きるために学んだ結果がこれで今役に立ってるけど、現代に生きてたら社会不適合者だよ。今もそうだけど」
「不適合って……」
「人ってさ、自分とちがうモノを排除したがるじゃん? つまりソレが私は的な。ってそろそろいい感じに血も抜けたので帰りますかー」
にへらと笑ってロープをおろし、木の棒にイノシシの手足を縛って金狼銀狼に運んでもらう。
微妙に気まづい空気が流れていたが、あまり気にしないでいいのになと小さく息を吐いた。
うっかり昔話をしたせいで仲の良い爺さん達に会いたくなってしまったが、今はまだその術はない。友達といえばお年寄りだった私からしてみれば若者が多いこの村も、司帝国も、どちらにしろ居場所はないのかもしれない。
「── Aは、異常ではないぞ」
不意にそう口に出したのはコハクだった。
「生きたいと思うのは動物の本能だ。だから腹は減るし私たちは狩りをする。何もおかしいことはない。だからAは異常でもないし、不適合者でもない。まぁ、もう少し私達を頼ってくれればいいと思うがな」
「……コハクの言う通りだ。男に劣らず狩りの腕があるのは誇るべきことだ。何も気にすることはない」
「そうだよ! ほらみんな美味しい肉食べられて喜んでるしぃ? Aちゃんの頑張りは無駄ではないよ! ね!」
「ん? んー、ソダネ」

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るーかす(プロフ) - 好きすぎて一気読みしてしまいました!夢主ちゃんの人間性がブレてなかった感じがしていままで読んだ中で1番の夢小説でした!好きこその葛藤と諦めだったり、クスッと笑えるギャグを入れてくださっていて心揺さぶられる素敵な作品でした!別サイトでも閲覧失礼します! (2023年11月26日 0時) (レス) @page34 id: 85f3bd2ffd (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 一気読みしました‼︎とても好きです!面白くて更新楽しみに待ってます‼︎ (2022年7月20日 18時) (レス) id: 7baaa43c79 (このIDを非表示/違反報告)
木の葉(プロフ) - 占ツクでも連載されていたんですね! 応援しています! (2022年3月31日 0時) (レス) id: 7a153d74d8 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 好きすぎて読むのが止まらず気づけば朝よ…(後悔はない めっちゃ面白いです!更新待ってます! (2021年10月13日 6時) (レス) @page33 id: 01548bf821 (このIDを非表示/違反報告)
藤葱(プロフ) - あやめさん» 一気読み、ありがとうございます。他サイトでは更新しているのですが、如何もこちらのサイトと私の相性が悪く更新停止気味です。すいません。 (2021年9月27日 8時) (レス) id: cb3dd02309 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤葱 | 作成日時:2021年1月21日 22時