事件終幕 ページ6
――莉月が、真剣な顔をしている。
それも、幼馴染の僕ですら感じたことのないようなピリピリした空気を発して。
莉月は諸手に、何やらキラリと光るものを何本か携えている。
よく見るとそれは、先が尖ったもの、丸いもの、様々な形がある刃物――
「……メス?」
どうやらあれが、能力媒体のようだ。
きっと、莉月は外科医を目指す身ゆえ、メスが媒体となった能力が発現したのだろう。僕が街の小さな人形店『
この街の人々に発現する能力は、ある程度、能力者本人の気質や職業、境遇などに由来する、というのをどこかで聞いたような――と思考を巡らす僕の視界の隅に、前方へ飛んで行く銀色の物体が映った。
最初、移動速度があまりに速くて未確認物体か何かかと思ったが、少し考えて、莉月が能力を発動したのだと理解する。
そして飛ばされたメスはそのまま風船を貫通、爆破し、ブーメランのようにターンして僕の視界の隅に映って後方へと戻っていった。
なかなか見事なメス捌き……能力捌き?に感心しつつ、肝心の風船は、とよく見る。
風船は、"救世主"の能力によって割られ爆発する寸前で動きを止めている。
確かこの後、僕が生み出した人形を少年が持つ風船の二メートル圏内に置いて、少年が風船を手から放して避難した瞬間を見計らい、"救世主"が能力を解除する――という計画なのだが。
(本当に成功するのこれ)
半信半疑で、能力を発動する。
……と、目の前には、風船と同じ数の十二体の人形。きれいに、猫能力者の脱出経路を作って並んでいる。さすが、思い通りに操られてくれるものだ。
僕は人形を手早く且つ入念に見て、不備がないのを確認してから、右手を挙げて"救世主"にゴーサインを出す。
すると、合図を受け取ったらしい彼が、手に持った"何か"を掲げて、こう呟いた。
「これで、閉幕です」
"救世主"の手の中の懐中時計。
その針が動いて、一瞬、空気が揺れた。
――刹那、
バァァァアアンッ!!
……ラパンが風船爆弾を放ったときと同じ、耳をつんざくような嫌な音が響き渡る。
でもそれは誰かを傷つけるものではなく、ここにいる全員が守られたということを証明する、収束の音だった。
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鴉莉朱(プロフ) - 編集画面の各お話タイトルのところのスパナのマークを開くとルビという機能があって、テキストという所に漢字、ルビという所にひらがな(読み)を入れると出るかと思います! (2017年4月13日 21時) (レス) id: ade0bf0099 (このIDを非表示/違反報告)
Акычо (あきほ)(プロフ) - あと、質問なのですが、漢字の上の小さなひらがな、どうやって出して居るんですか? (2017年4月13日 20時) (レス) id: 84ab421957 (このIDを非表示/違反報告)
Акычо (あきほ)(プロフ) - はい!頑張ってください! (2017年4月13日 20時) (レス) id: 84ab421957 (このIDを非表示/違反報告)
鴉莉朱(プロフ) - Акычо (あきほ)さん» ご意見ありがとうございます。これから少しずつそういったところも修正して伸ばしていけるように頑張ってみます。 (2017年4月13日 5時) (レス) id: ade0bf0099 (このIDを非表示/違反報告)
Акычо (あきほ)(プロフ) - 情景がよくわかりません。回りの風景の説明などを、皆が想像できる程度に説明したら、もっともっと面白い作品になるとではないかと思いました。これからも、頑張ってください。 (2017年4月12日 22時) (レス) id: 9a5e5744b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鴉莉朱 | 作成日時:2017年4月6日 20時