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敦が洗濯物を乾燥器のほうに移しているころ、探偵社では。
「へぇ、それじゃあ太宰さんを探しにヨコハマまで?」
「そうなのだよ。消息不明になってからというものの本当に居場所がつかみにくくなって。ついに見失ってしまった」
「それじゃあ、帰ってくるのを待っていましょう!」
賢治の元気な声に思わず顔をほころばせるA。
探偵社全体が、彼女に警戒心を抱かなくなってきた中、ただ一人何かの違和感を抱いている者がいた。
(あの人…どこかで)
鏡花だった。
以前、マフィアにいた時かそれよりもっと前の記憶なのかわからないが、彼女を見た事があるような気がしてならなかった。
しかし、いくら記憶を探っても誰だったのかは思い出せない。
名前も覚えていないし、どんな顔だったかもよく覚えてはいないが、どこかで出会ったことがあるような。その様な感覚で会った。
__勘違いかも知れない。
そう思うことにしたが、どうも気に為る。
それに敦が言った言葉も心のどこかで引っ掛かっていた。
『太宰さんの命を狙っているかも知れません』
彼女がマフィアやその関係の人間だった場合、鏡花がどこかで見ていてもおかしくはないだろう。
その場合、本当に太宰の命が危なくなるため、警戒を解くことはできなかった。
「そうだ、フルネームを教えていただけませんか?書類を作りたので」
谷崎が言う。
その言葉に困ったように首を振る彼女、その場にいた調査員達は一瞬警戒が戻った。
次の彼女の言葉を促すようにもう一度谷崎が言う。
「どうして、ですか?」
「私の生まれの問題でね。私はね、孤児なのだよ。だから名前はあるが苗字もない。もちろん戸籍なども存在していないよ」
「ああ、なるほど」
名前を知られるとまずいのかと思たが、どうやら違うらしい。
気まずいことを聞いてしまった谷崎が「すみません、なんか」と謝るが「いいってことよ」と笑われてしまった。
「そういえば、太宰さんにはどういったご用件で?」
__賢治、それを聞いてしまうのか。
調査員の心の声はそろった。Aは呆気にとられたような顔をして固まった。
先ほど、敵かと思わせるような言葉(違ったようだが)があったため、少し慎重になっていた中、その質問は強かった。
賢治のほうはただ純粋に疑問を持っただけなのだろう。
一同が固唾を飲んで彼女の言葉を待った。
「いやねぇ、一言いいたいだけなのだよ。本当に、一言でいいんだ」
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みぃ(プロフ) - 紅羽さん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2019年1月18日 22時) (レス) id: 48f4ee6765 (このIDを非表示/違反報告)
紅羽 - とっても面白いですね!更新頑張って下さい!応援してます! (2019年1月11日 20時) (レス) id: a17c6e8d22 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - yamamia38さん» こちらこそありがとうございます! 更新遅くて申し訳ございません。これからもよろしくお願いします! (2018年12月18日 18時) (レス) id: 48f4ee6765 (このIDを非表示/違反報告)
yamamia38(プロフ) - ヤバい!面白いですね!投票とお気に入り追加させていただきました!太宰さん推しだから嬉しいです。有難うございます! (2018年12月16日 22時) (レス) id: bb32575fc9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 青森県と大阪府さん» コメントありがとうございます!ちょっと今日本にいないので更新はできないので、ごめんなさい。勧めてまでくださり…照れます。これからも、よろしくお願い致します。 (2018年10月23日 23時) (レス) id: d688bcfef3 (このIDを非表示/違反報告)
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