17 ページ18
・
翌日、朝食を済ませたあと、蘭さんは車で駅まで送ってくれた。
そして改札口の前で立ち止まると、蘭さんは喋り出す。
「A。お前にとっては辛い数ヶ月だったと思うけど、俺は幸せだった」
「蘭さん……」
「お前は最高の"女"だった」
最高の犬ではなく、最高の女。
初めて言われた言葉に、私の頬には一筋の涙がツーッと流れ、地面に落ちた。
「大変だったけど、貴重な時間でした。解放してくれて本当に感謝しています。どうかお元気で」
いやお元気にされたら他の誰かが死ぬんだけどね!?
でもそういうことは抜きにして、蘭さんには元気でいてほしいと思う。
これからは他の犬を見つけるのかな。
他の女を抱くのかな。
その女にも「タイプだ」とか「昨日のお前は可愛かった」とか言うのかな。
そんなことを考えてしまう自分に、そして複雑な気持ちがしてしまう自分に困惑する。
こんなろくでなし男とさよならできて嬉しいはずなのに。
「また嬉し涙か？ A」
一筋だったはずの涙は、気づけば次から溢れ出しては落ちていく。
「嬉し涙です」
私はニコッと笑うと、改札の方に体をくるりと向けた。
この改札を通れば蘭さんとはもう会うことはない。
それでいい。それがいい。嬉しいでしょ？
だってこんなにも嬉し涙がボロボロと溢れてくるんだから。
私は袖で涙を拭うと、振り向かずに「蘭さん」と言った。
「嘘です」
「何が？」
「……悲し涙です」
「っ!!」
私はそれだけ言うと、蘭さんが何も言わないうちに、振り返らずにそのまま改札の中へ駆け込んだ。
「何が悲しいんだろ、私」
電車の窓にもたれかかって、次々と流れていく景色を虚ろに見ながら呟く。
こうして蘭さんとの奇妙な関係は、終わった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1382人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まお - 完結おめでとうございます!キュンキュンしながら読ませていただきました。蘭ちゃんの色気がものすんごいのは間違いない（確信） (2022年1月23日 7時) (
レス) @page31 id: 4ee49a658f (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - 華さん» ありがとうございます！！良作を作れるよう頑張ります！ (2022年1月17日 14時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
華 - 完結、おめでとうございます！ これからも変わらず応援してます！ (2022年1月16日 23時) (レス) @page31 id: a19f9ab121 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - ゆさん» 最後まで読んでくださりありがとうございます！素敵と言っていただけて嬉しいです！☺️ (2022年1月16日 20時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - ATR214YSさん» 最後まで読んでくださりありがとうございます！楽しんでいただけて光栄です😌 (2022年1月16日 20時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みくる
| 作成日時：2021年12月2日 19時
