出会って三日目 ページ4
淡々と告げる少女に嫌気がさして、肩にかけていた外套を構わず投げた。ぎりと拳を握る。
いくらあの武器商人が外道だとしても、直接的な親子関係がねぇにしても、血の繋がったガキにこの仕打ちはないだろう。そしてその仕打ちを甘んじて受け入れる少女にも同じく苛立ちが募った。
「立原、そのガキ外套に包んで運べ。本部へ戻る」
「えっ中也さん、この子連れて帰るんスか?!」
「一時的にだよ。腹の件は抜きにしても、負った傷はマフィアが起こした抗争が原因だ。落とし前は手前らで着けなきゃならねェだろ。それに立原お前、子ども好きだったよな。そのままじゃ直に袋が溶けて薬が身体に回る。薬にやられて狂ったそいつが見たいか?」
「い、嫌ッス」
「じゃあ黙って運べ」
胸糞悪ぃと吐き捨てて車に乗り込むと、早急に本部へと向かうよう部下に指示を出す。この場に残らなくてもあとは掃除屋に任せれば問題ないだろう。そう言い訳をして、道中窓の外を眺めていた。
*
「容態は」
「完全とはいきませんが、大方薬は体内から取り除きましたし、傷の処置も折れた骨の固定もしておきました。歩くだけなら明日明後日からでも問題ないでしょう」
「了解した。態々すまねぇな」
恭しく頭を下げる医師の横を通り過ぎ、戸を叩いてから部屋に入る。寝台には上体を起こした少女が不思議そうな顔で座っていた。先程より幾分か綺麗な身形になっていることから、看護師に風呂にでも入れてもらったのだろう。
「よォガキ」
『ここ、何処』
「ポートマフィア本部の医療機関区域だよ。薬を身体に押し込めた子どもなんざ、一般の病院には連れて行けねぇだろ。俺の身分的にもな」
『神様なのに?』
「それずっと言ってるけど何なんだよ。俺は神でも仏でもねぇぞ」
乱暴に頭を掻きながら返すと、彼女は下を向いて細くて小さな手を腹に当てた。一度撫でて、今度はもう少しゆっくりと撫でる。その意図が俺には掴めなかったが何か歯痒い気持ちになった。
『別に自分がこの世の誰よりも不幸だとは思ってない。でも、苦しかったから。誰と比べてとかじゃなくて私が苦しいと思ったから。両親が死んで、親戚の家をたらい回しにされて、行き着いた先でお腹切られて。だから、だからようやく、神様が来てくれたのかと思った。助けに来てくれたのかと思った』
ぽつりぽつりと話すその子どもに俺は言葉を返すことが出来なかった。
神様。
その言葉はずっと、彼女の救いだったのだと悟ったから。
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苗代(プロフ) - 彩花さん» コメントありがとうございます。これからも頑張って更新していくので、ぜひご贔屓に。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - とっても面白くて一気読みしてしまいました!!!これからも頑張ってください!と (2018年7月17日 15時) (レス) id: 2058922f9b (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 苗代さん» よろしくお願いしますm(__)m頑張ってくださいq(^-^q) (2018年7月13日 18時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 初めまして、作品を好きだと言って頂けてとても嬉しいです。これからも出来るだけ頑張って更新を続けていくので、これからもよろしくお願い致します。 (2018年7月12日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 初めまして(*^^*)こんにちは(・∀・)ノこの作品本当に大好きです(*≧∀≦*)更新頑張ってくださいq(^-^q)応援してます(σ≧▽≦)σ (2018年7月12日 23時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
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