○30* ページ30
.
『ゆっくりでいいよ。
もし言えないなら、それでもいいから。』
そう言ったらAは顔をぱっと上げて
ぶんぶんと横に首を振った。
小さな手に俺の手を重ねれば、キュッと指を握る。
そして、Aの口からぽろりぽろりと言葉が出てきた。
「怒んないで聞いてくれますか…？」
『大丈夫だよ、怒んない』
「たつやくんは、…」
『ん？』
「たつやくんは、私のこと嫌いにならないですか？…」
嫌いになるも何も、なれない。
もうそれくらいAを好きになってしまったから。
よく言葉の意図がわからなくて
その質問はただありのまま、
「なにがあっても大好き」と伝えた。
ゆっくりと顔を上げたAは、静かに話し始めた。
「私、… 男の人が怖いんです…」
『…んーと、それはその…』
「高校2年生のときずっと片思いしてた人と付き合って、その人が初めての彼氏だったんです。
はじめはすごく優しかった…
でもその人すごく暴力振るう人だったみたいで…
着てた服破かれて、殴られたり蹴られたりっ…
いろいろ、無理やりされてっ、…それで…」
『もういいA！もういいよ、わかったからっ…！』
まさか、そんなことがあったなんて俺も想像してない。
涙を流しながら言葉を絞り出すAを見てるのが辛くて、Aの言葉を遮るように俺は抱きしめてしまった。
辛いのはAの方だったはず。
こんなことを俺に言う勇気はただもんじゃない。
大好きだった人にそんなことされて、トラウマにならないわけがない。
どこの誰だかも知らないその男への苛立ちと憎しみ、Aをこんなふうにしてっていう気持ちで気がつけば俺も泣いてた。
「…ねぇ、ふっかさん…」
『どした？…』
「ごめんなさいっ、…私、汚いからっ…」
無理やりされたことと、体にはまだ傷が残ってるらしく。
Aはそんな自分が汚れてると思ってた。
Aは悪くない。なにも悪くないのに、
なんでこんなに辛い思いをしないといけないんだろう。
『どうして謝るの？Aは何も考えなくていい、
汚いなんて俺思わないよ。好きだよ』
「ふっ、かさんっ… ふぇぇぇぇんっ…！」
『大丈夫だからね…俺ずっとそばにいるからね…
ひとりにしたりしない、置いてかないよ？』
涙でいっぱいの顔を両手で覆うAを力いっぱい抱きしめる。隙間がないくらい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1092人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほの - 実玖さん» 私もしょっぴーとふっか好きです！ちなみに私はめめ推しです！ (2019年10月29日 17時) (
レス) id: 09e43cf4c2 (このIDを非表示/違反報告)
実玖(プロフ) - ほのさん» ありがとうございます！誰担か…と言われるとしょっぴーとふっかさんよりのオール担…ですかね！でもみんな結局大好きなので選べません(泣) (2019年10月29日 0時) (レス) id: 14ab37bdb1 (このIDを非表示/違反報告)
ほの - 今日見始めました。読みやすいし楽しいし最高です。質問ですけど作者さんは誰担ですか？ (2019年10月29日 0時) (レス) id: 09e43cf4c2 (このIDを非表示/違反報告)
実玖(プロフ) - mikkyさん» いつもかなり、んー、ふっかさんならどう言うかなぁって考えながら書いてるので、ふっかさんらしく書けてるのであれば嬉しいです！ (2019年10月14日 6時) (レス) id: 14ab37bdb1 (このIDを非表示/違反報告)
mikky(プロフ) - 全ての言葉・言動がふっからしい。こういう風なんだろうなって読んでいてハマってしまいました！またの更新待ってます^ ^ (2019年10月14日 4時) (レス) id: fd56c0dfc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：実玖
| 作成日時：2019年9月28日 23時
