27食目。 ページ31
いつしか館には何もなくなっていた。
食料はもちろん、アルテやポロもとっくの昔に食べてしまった。
残されたのは、「食べられないメイド」とバニカのみ。
……いや、もう一人いた。
バニカとカルロスの間に生まれた子が。
【食べないのか？】
どこからか声が聞こえた。
セレナには初めて聞いた声だったが、バニカは知っているようだった。
「久しぶりね、『悪魔』」
その言葉で、セレナはこの声が『悪魔』であることを知った。
バニカは『悪魔』としばらく話していた。
ふと、バニカが悪魔に尋ねた。
「あなたはなんでも知ってるのね。アルテやポロ、セレナのことも知っているの？」
悪魔はアルテとポロについては饒舌に話した。
しかし、セレナについては知らないと言った。
「誰だそいつは？」
バニカは少し驚いたが、それはセレナも同じだった。
彼女は実は自分のことをよく知らなかったのである。
悪魔まで知らないというと、一体自分はなんなのだ？
セレナが考えていると、バニカと悪魔の会話はもう終わっていた。
「食べてやるわよ、自分自身をね」
そう言って右手にかぶりついた。
思わずセレナは目を閉じてしまい、気がついたときにはバニカはもう、いなかった。
セレナはテーブルに置かれたワイングラスを見た。
多分これは、悪魔の宿る器……バニカのいるワイングラスだろう。
セレナはワイングラスに触れた。
どこからか、声が聞こえた。
「あなたは一体、何だったの？」
セレナはその声に答えた。
「私にもよくわかっていません。
きっと、思い出すでしょう。」
そして、テーブルに付着した血に触れた。
セレナは目を閉じ、たくさんの記憶に流されそうになるのを堪えた。
そして、
「私は」
とだけ呟いた。
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いんく(プロフ) - 桜猫さん» 返信遅れてしまい申し訳ありません。一ヶ月一冊ペースで進めていくつもりですので、こちらもよろしくお願いします。 (2016年8月5日 19時) (
レス) id: 8afac89c30 (このIDを非表示/違反報告)
桜猫 - こちらも読ませていただきます( ^ω^ ) (2016年8月3日 11時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いんく | 作成日時：2016年8月1日 22時
