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26食目。 ページ30

ある日セレナが街から帰ってくると、屋敷は静まりかえっていた。

庭にいる家畜たちは鳴き声をあげていたが、人間の声や足音は全くしなかった。

セレナは不審に思い、あらゆる部屋を回った。

アルテとポロの部屋はもちろん、厨房や食料庫も全て回ったが、手がかりはなかった。

最後にバニカの部屋を訪れると、彼女はベッドに仰向けになりながら大きくなったお腹をさすっていた。

少し、部屋が生臭い気がした。

自分の部屋や屋敷は毎日掃除をしていたが、アルテとポロ、バニカの部屋はあまりできていなかった。

多分、それだけではないのだろう。

地面にはアルテのリボンが落ちていた。

黒と白の布のような何かも落ちていたし、金色の糸もたくさんあった。

「……バニカ様」

バニカは「居たのね」と呟いて、セレナのほうを向いた。

「アルテとポロがいないんです。」

「ああ……大丈夫よ、彼女たちはここにいるから。」

バニカかふわりと微笑み、再びお腹をさすった。
セレナはなんとなく察していたが、こうも伝えられると、少しだけ心にくるものがあった。

「…そうなんですね。寂しくなります。」

そのとき、部屋の時計の鐘がなった。

セレナは時計を見て、夕飯の時間だとわかり、バニカに話しかけた。

「もう、こんな時間ですね。
そろそろ、夕飯の支度をしましょう。
メイドは私しかいませんし。
それに…少し、お腹が空きました」

バニカはそうねと言い、セレナを見つめた。

「私もお腹がすいたわ。さっきご飯食べたのにね。

でももう、私耐えられない。
ねぇ、セレナ。
貴方はどんな味がするかしら?」

バニカはそう言い、セレナの手に噛みついた。

今までなら、そのまま肉を噛み千切りおいしくいただくところだった。

『今まで』なら。

バニカはセレナに噛みついた途端、苦い顔をしてはきだしてしまったのである。

悪魔と契約したことで、何でも食べられるようになった。
多少の好き嫌いはあっても、今みたいに体が拒絶するようなことなどなかったのである。

トラウマのようなものが甦り「残したら怒られちゃう」と何度も呟く。

セレナはそんな主の姿を見て、悲しそうな顔で言った。

「私自身もよくわかっていないことですが、私はこの『世界』にとって、いなくなってはいけない存在なのです。
この『世界』で生まれた貴方の体が、私を喰らうことを拒否しているのです。」

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いんく(プロフ) - 桜猫さん» 返信遅れてしまい申し訳ありません。一ヶ月一冊ペースで進めていくつもりですので、こちらもよろしくお願いします。 (2016年8月5日 19時) (レス) id: 8afac89c30 (このIDを非表示/違反報告)
桜猫 - こちらも読ませていただきます( ^ω^ ) (2016年8月3日 11時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いんく | 作成日時:2016年8月1日 22時

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