1+1=LOVE〜Donghae〜

30:落ち着け、あたし ページ30

*



カタカタカタカタ………


無駄にキーボードを叩いて


掌にじんわり汗が滲んで、ハンカチで何度も拭う



落ち着けあたし

チラッと目の端の時計を見る



そろそろ……

帰ってくる頃？



「先輩、文字、おかしいですよ？」

「へ？」

「いやだから、それ。報告書でしょ？全く文字になってないですよ？」



ﾘｮｳｸに指摘されてパソコン画面を見る



「！！！」

「どうしちゃったんですか？今日は朝からずっと変だったけど…」

「いや、あはは……(汗)」



慌ててまたカタカタカタカタ、backspaceキーを叩いてめちゃくちゃな文字を消す



スゥ……はぁ……



自分が、息をしてなかったことに気づいて大きく深呼吸をした



まったく、中学生じゃあるまいし

この歳にもなって何を動揺してるんだろう



「ただいま戻りました〜」



ドキン！！



ジヨンの声に、ﾄﾞﾝﾍも一緒なんだと頭が理解する前に心臓が音を立てた



「あれ？先輩珍しいですね、こんな時間に報告書ですか？」

「え？ぁあ、うん…」



パソコン画面を覗き込むジヨンの肩越しに、ﾄﾞﾝﾍと目が合う



す、っと逸らされた視線にズキズキと胸が疼く



「お疲れ…さまです」

「お疲れさま……」

「さー、今日の業務も終わったし、報告書は明日書くとして
オッパ、今からごはん行きませんか？」

「え？」

「いいね！行こう！！」

「え！？」



その時、わらわらと数人の同僚たちが現れて俺も私もと声を上げた



「ちょ、あたしはオッパと2人で…」

「なに、デートでも？え？まさか、お前らって」

「え！？いや、その……////」

「……」




なんで否定しないの？

違うって、なんで言わないの？



照れるように頬を赤らめてﾄﾞﾝﾍを甘えるように見上げるジヨンの横で

ただ黙って立ってるだけのﾄﾞﾝﾍ




ダメ…



ガタン、と

思ったよりも大きな音で席を立ってﾄﾞﾝﾍをジッと見る


私の視線に気づいたﾄﾞﾝﾍと、視線が絡んだ瞬間、時間が止まったような気がした



「ダメ…」

「「「え？」」」



フロアにいた全員があたしを見てる


でもそんなこと、もうどうでもよかった



「行っちゃダメ」

「……」

「だって…まだ宿題の答え、提出してない…」



視界がぼやけて、ﾄﾞﾝﾍがまるで海の中にいるみたいに見える



「あたし…まだ正解、教えてもらってな、い…」

「ヌナ…」



そう呼ばれたのと、目の前が真っ暗になったのと



ほぼ同時だった




*

31:離したくない→←29:考えたくない「もしも」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す