4)光から差し出された手 ページ5
「ポートマフィアの幹部がAさんに何の用だ」
「何、勧誘だよ。フラレてしまったけど」
太宰は暗く、どこか寂しげな目で、国木田の後ろにいるAを見る
「・・・・貴女なら・・・貴女が、側にいてくれたら・・・・何かわかるかなって思ったんだけどね・・・・・」
「・・・・・・・・・なら、来れば良い」
「「え?」」
キョトンとする太宰と、ギョッとする国木田
Aは楽しそうに笑う
「フフッ、私は来る者を拒まないわよ?」
「わた、しが・・・?」
「な、な、何を言っているんですか!?Aさん!!」
「行くわよ、独歩」
クルッと振り返り、歩き出すAを慌てて追いかける国木田
「待ってください!Aさん!!」
残された太宰は、しばらく呆然としていた
「・・・私が・・・光の世界に・・・?」
一度も考えた事もない、思いがけない誘いだった
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とある日の海岸線の歩道を歩く男
腕に抱える紙袋にはたくさんのお菓子
「!」
正面から歩いてくる一人の少女が目に入る
「(・・・綺麗な金髪だな・・・)」
何気なく思った事
すると、ビリッと嫌な音がして
「あっ」
底抜けた紙袋からお菓子が落ちていった
「あー・・・・」
やってしまった・・・と思いながらお菓子を拾う
「大丈夫ですか」
「え」
さっきの少女が立ち止まり、しゃがんでお菓子を拾う
「紙袋、破けていたのかしら」
「みたいだ、ありがとう」
少女は持っていた鞄から大きめの布を取り出す
「こんなのしかないけど」
「いや、抱えていくから・・・」
「その量を?また落としてしまうわよ?」
「・・・・・・・・すまない、借りる」
少女は楽しそうに笑い、布を袋の形に結び、お菓子を入れる
「はい、どうぞ」
「ありがとう、この辺りの家か?改めて礼を」
「気にしなくていいわよ」
「そういう訳にも行かない」
「・・・ふふっ、律儀なのね」
少女は小さなメモ紙になにかを書き、男に渡す
「私の携帯電話の番号、私用事で近くの家を借りてるの。暇だからいつでもかけてきて」
「ありがとう・・・あ、名前・・・」
「あら、自己紹介がまだだったわ」
二人で思わず笑ってしまう
「俺は織田、織田 作之助だ」
「織田さんね、私は夏目 Aよ、宜しくね」
これが、運命の分岐点になる事を
彼女以外、誰もが知るよしもなかった・・・・・
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作者名:水琴 | 作成日時:2019年4月16日 7時