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[普通に生きてきたかった。あの頃のまま普通に]




震える手がそう白紙に黒いインクを落としていく


初めて見た、彼女の涙


いつも笑っていて、暗い顔なんて見せたことがない


そんなAの大粒の涙。




まぁ、泣きたい気持ちは分かる。


好きなやつが、目の前でイチャイチャしてんねんもん


自分はなに話してるかわからん。そら泣くわ


…くそ、神ちゃんめっちゃ腹立つやんけっ!!!




[なぁ、普通ってなに?Aは普通やないん?普通の女の子やんか]


[耳、聞こえないから]


[やからなに?普通やないん?恋してる女の子やんか]


[私には、智洋の声もしげくんの声も聞こえない。2人がどんな声をしているかわからないし、目を見ないとなにを話しているかわからない]



ポタ…ポタ…と落ちる涙で字が滲んで行く





[なんで、俺が手話の勉強せぇへんのか知ってる?]





"…あんたが、神ちゃんに手話教える時に悲しそうな顔するから"



忘れない。あん時、一瞬見せた悲しい顔。




"……手話、できるの?"



"出来る。簡単なやつしかでけへんけど。だいたいわかってた。"


"…自分には、これでしか意思を伝えられない。
そういう顔をしてた。ありがとうとごめんなさい、そんな気持ちが混ざった顔"


"それを見て、俺はこうやって話すことをやめた。普通やないって思うんやったら、Aが思う普通で接していこうって決めた"


"わかっても、知らないふりをした。"


"それで、少しでもAが笑顔になれるんやったらええと思って"




"…でも、泣いてる。なんでや?"




"あの2人を見て…あんな智洋を見て…"




"私は出来ないっ…彼のギターの音色も、綺麗だと言われる歌声も聞こえないっ、!"



"彼に呼び止められても振り向けない!呼び止められない!"



"私はっ…智洋の負担にしかならないっ!!!幸せなんてないっ"



"なのに、隣に居たいって…付き合いたいって…"




世界一静かなやりとりは


世界一気持ちがこもった、悲痛な叫び。


声にならない気持ちを、彼女は全て手話で伝える


気持ちを手に込めて。





"自分と付き合ってもいい事ない?はぁ?何言うてんの?"



"神ちゃんの幸せ、あんたが勝手に決めんな!勝手に決めてええやつちゃう!!!"



"確かに神ちゃんは優しい!けどなぁ、好きちゃうやつの為に看病したり手話勉強したりせぇへんわ!!!


自分に自信持てや!!!"





神ちゃんなぁ、めちゃくちゃ幸せそうな顔してんねんで。

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みこ(プロフ) - まりんさん» こちらも読んでくださってるんですね!ありがとうございます!!!期待に応えられるように頑張ります! (2019年5月18日 23時) (レス) id: c6a330bc5b (このIDを非表示/違反報告)
まりん(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年5月18日 21時) (レス) id: b59f2ee03b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みこ | 作成日時:2019年5月17日 14時

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