第54話 助ける(鶴丸) ページ5
驚き過ぎて言葉が出ない。
いやいや、水中だから言葉すら出ないんだが。
今の状況下を忘れるほど、君の登場に驚いていた。
何故君がこんな所にいるんだ⁉
そう目で訴えかけた途端、また一気に身体が重くなる。下を見ればいくつもの顔が底に在り、あの触手が俺と見習いの腹部に巻き付いていた。
あ・鶴「「っ⁉」」
まさかこいつ、見習いまでも巻き込もうと…っ
俺は急いで腰に携えている刀へと手を伸ばした。
しかし、その腕は触手に囚われた。
まずい……此の儘では見習いも溺れ死んでしまう。それだけは避けたいもんだ。
この憎たらしくもどうしようもない見習いを助けたい。その一心で俺は静かに目を瞑る。
袖を妙に引っ張られるなとか思えば、見習いが必死に引っ張っていた。
____鶴丸国永!目を瞑ったら駄目‼
見習いの、彼女の心地いい声が聞こえる。
頭に響く声に思わず表情を綻ばせ、彼女小さな手をしっかりと握る。
あ「っ⁉」
……この手は、死んでも離さない。
見習いを助ける。他の誰でもない、俺の手で‼
集中させ、今まで抑制していた霊力を一気に上げる。高霊力で一気に黒の触手を消滅させ、水中で抜刀し、彼女に絡みつく触手をスパンと斬り消滅させる。
あ「……!」
繋いでいた手を引き悪いと思いながらも彼女の腹へ片腕を回しては、水面目掛けて浮上する。
上がる前にちらりと下を見れば、嘘の様に亡者の敷き詰められた怨念の顔や触手は無く、川底が目に入った。
鶴「っぷはっ!」
あ「っは、ゴホゴホッ」
鶴「だ、大丈夫か君!」
あ「………ご心配、なく、っゴホゴホッ」
器官や肺に水が入ったんだろう、見習いは酷くむせる様な咳をしていた。濁流だった川は嘘の様に落ちつき、彼女を引きつつ川岸へと上がった。
全身ずぶ濡れ、装束は水を吸いに吸い重い。
羽織を脱ぎ絞っていれば、咳が治った見習いが慌てて俺をみ……否、身体を怪我はないか確かめる様に見ていた。
……顔は見たくないと。
過去に散々傷つけてきた苦い思い出がドスッと酷く心に刺さる。
あ「怪我はない様ですね」
鶴「あ、ああ。……じゃないっ、どうして君がっ、」
あ「助けに」
鶴「……え、?」
あ「貴方様を助けに来ました」
俺を、助けに?
____ドクンッ
鶴「……、」
あ「あ、あの?」
鶴「……早く戻るぞ」
あ「おわっ⁉」
湿る俺の羽織を掛けさせ彼女を横抱きにし、兎に角すたすたと歩く。
……駄目だ、顔が熱い。
これは一体、何なんだ。
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十六夜 - えぇ、鶴丸落ちになりそうなんですが(汗)わたしは、三日月推しです!!! (2018年5月17日 3時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続きは、まだでしょうか?早く続きが読みたいです!! (2018年3月30日 11時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - うぉぉぉ!!!すごく面白いです!!!今後の展開も楽しみです! (2018年3月6日 22時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
白紫乃(プロフ) - とっても好きなお話です!更新お待ちしております! (2018年2月21日 20時) (レス) id: 43803e668e (このIDを非表示/違反報告)
霜月 - 鶴丸は、夢主が好きなんですね。でも、私としては三日月落ちがいいです!!三日月、大好きです! (2018年1月14日 15時) (レス) id: 51d1ba9355 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミコ | 作成日時:2017年8月28日 12時