幸は強いね ページ40
幸｢………いえ、別に｣
レニ｢悪いね。ちょっと血の気の多い子だから。
………ところで、君の後ろにいる子は誰かな？｣
『………』
幸｢オレたちの劇団の助監督兼演技指導だけど｣
レニ｢名前は？｣
幸｢………｣
言いたくない、と幸の肩に手で書いた。
幸｢言いたくないって｣
レニ｢そう…｣
レニ｢君たちもビラ配り？何やるの？｣
椋｢あ、アラビアンナイトモチーフのお芝居でーー。よかったら、どうぞ｣
椋はそう言い神木坂さんにチラシを渡した。
でも、神木坂さんはチラシを見た瞬間に破った。
椋｢え！？破ってーー！？｣
幸｢……何こいつ｣
『！！』
レニ｢……行くぞ、丞、晴翔｣
顔色を変えて私たちを睨み、ストリートACTをしていた二人にそう言った。
晴翔｢はーい｣
丞｢……｣
幸｢何あれ。団員も団員なら代表も代表だね｣
椋｢なんか、劇団の名前を見た途端、態度が変わったような気がするけど……｣
幸｢弱小ってわかったからじゃない、性格悪｣
椋｢そうなのかなあ……｣
『早く配ろっか。いつまでも終わらないし』
椋｢あ、そうですね！｣
私たちは駅の方に移動して、ビラ配りを再開した。
椋｢MANKAIカンパニーです！よろしくお願いします！｣
幸｢近日上演開始でーす｣
二人と同じフラ中の制服を着た中学生がこちらに向かって歩いてきた。
｢あれ？瑠璃川？｣
｢ほんとだ、瑠璃川じゃん！｣
幸｢………｣
幸の顔は少しだけ険しくて、何か嫌なことを思い出しているような顔つきだった。
｢お前まだ女の格好してんのかよ｣
｢マジウケる。似合ってるじゃん｣
｢もういっそ性別変えちゃえば？｣
｢たしかに。名前を裏切らないよな〜｣
男子中学生二人はゲラゲラと下品な笑い方をして幸を見た。
幸｢……｣
椋｢ちょ、ちょっと、なんですかーー！？｣
幸｢いいよ｣
椋｢幸くん…｣
｢あ、もしかして女装友達？｣
椋｢ーー｣
『ちょっと……！』
幸｢お芝居。演劇公演のチラシ｣
｢演劇？｣
幸｢そう……今宵も語って聞かせましょう。
めくるめく千の物語のその一つ…｣
幸は一番最初のシェヘラザードのセリフをストリートACTをするように言い始めた。
｢ーーっ｣
｢な、なんだよ、急に｣
幸｢……っていう感じのお芝居。
はい、これあげるから、千秋楽絶対来てね？｣
｢演劇なら……アリ｣
｢アリだな…｣
態度がすごく変わった。
幸｢よろしく〜｣
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作者名：ろい
| 作成日時：2018年6月30日 23時
