大事なさんかく＝三角定規 ページ34
？｢おい、聞いてるのか｣
いづみ｢ーーは、はい！わかりました！｣
？｢ふん、わかればいい｣
そして、稽古は終わり夜に＿＿＿＿＿
一成｢はいはい、みんな、ちゅーもく！｣
幸｢何？｣
椋｢どうしたの？｣
一成｢じゃーじゃじゃーん！｣
一成が変な効果音をつけて出したのは8ミリビデオデッキと8ミリビデオ。
支配人｢あ！それは…！｣
幸｢何それ｣
『8ミリビデオデッキと8ミリビデオだね』
いづみ｢あ、もしかして、この間の夏組ビデオテープの！？｣
一成｢ういうい。
8ミリビデオはAちょんと一緒に直したんだけど、ビデオデッキはオレの友達にでこういうの集めてる奴がいてさ、貸してもらった！｣
幸｢へー。これがビデオ？｣
椋｢なんだかレトロでいいね｣
一成｢すけっち、ビデオのセットよろ！｣
支配人｢はい！｣
一成｢じゃ、電気消すよ｣
パチという音がして、電気が消えてかなり真っ暗になった。
見ていると稽古場らしき場所が映った。
一成｢あ！これ、稽古場じゃね！？｣
幸｢今も昔のまんまだね｣
支配人｢懐かしい…｣
『あ……』
映ったのはいづみちゃんのお父さん＿＿＿初代の監督だ。
椋｢あれ？この人……｣
天馬｢初代の監督か？｣
いづみ｢………｣
幸｢なんか、この人監督に似てない？｣
ずっと食い入るようにしてビデオを見つめていたいづみちゃんが口を開いた。
いづみ｢お父さんだ……｣
一成｢え！？カントクちゃんのパピー！？｣
幸｢親子二代で監督やってたんだ｣
ビデオに映るいづみのお父さんはとても楽しそうで……夏組の団員の人も生き生きしていた。
私も、こんなふうに楽しそうな表情でお芝居をしていたのかな？
でも、きっと……こんな表情になることはない。
『っ……』
涙が出てきたことが分かったのは涙の雫が手に落ちたときだ。
その時、私は自分が泣いているということに気づいた。
天馬｢……やっぱり、うまいな｣
幸｢面白いし｣
椋｢うん、Aさんが言ってた初代夏組の良さがわかる｣
泣くつもりは全然なかったのに……。
私はせめてもの抵抗でフードを深くかぶった。
三角｢……はい｣
『……？』
三角の声がして、手に違和感を感じた。
ほんのり温かくて、それは私を驚かせるのには十分だった。
三角｢さんかくあげるから、泣かないで｣
手渡されたのは三角定規だ。
大事なさんかくをくれたということは、それほどなんだろう。
『…ありがとう』
三角｢えへへ〜｣
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作者名：ろい
| 作成日時：2018年6月30日 23時
