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20回目 ページ20







「っ、ふぅ……」



ギシリ、とスプリング音が響く静かな保健室。
薬品特有の匂いを吸い込んで真白いベッドに潜り込む。

まさか体調を崩すとは思わなかった。
確かに最近、頭痛いとかちょっと熱っぽいとか思ったり思わなかったり。


…あ、思ったよりも寝れそう。
重くなる瞼に抵抗はせずにそのまま目を閉じた。






_____



パチリ。
目を開けるとそこには見慣れた顔がすぐそこに。どちらかが顔を傾けたら唇さえ当たりそうな、そんな距離。



「ありゃ、起きちゃった。寝込み襲おうと思ったのにな〜」



悪びれもなくそう言って、帽子を被り直す花子さん。そして小さなため息をついて横にある椅子に座った。



「サボり?」

「…違うもん」

「あははっ、ごめんって。今のジョーダンだよ、怪異のジョーク」



何それ。アメリカンジョークみたいな言い方してさ。
なんだか少し面白くてクスリと笑って、口元に手を当てる。



「頭、痛いノー?」



少し眉を下げて心配そうに聞いてくる花子さんに素直に答える。

小さく首を縦に降った。



「熱は…っと、」



思わず目を見張った。
花子さんはなんと私の上に跨り、熱を測るために額と額を合わせたのだ。



「熱は無いねー。
なんかあつ、…………ふぅん、赤くなってどうしちゃったの?」



だから嫌だったのに!!

調子が良くなったのか花子さんはニヤリと笑い、そのままの体制から退こうとはしない。



「熱のせい?それとも……俺?」



吐息混じりに耳元でそう言われ、過剰なまでにビクリと身体が揺れる。

ビリビリ。電流が走ったみたいに背中の後ろの方も頭の中もその感覚でいっぱいになりそうなくらい。



「…………触っちゃったら、ゴメンね」



数秒の沈黙の後、花子さんはゆっくりと布団の中へ手を入れて私の腰辺りをまさぐった。

くすぐったさを覚えつつも必死に我慢してそれに耐える。



「みぃつけたっ」



パッと手を出して持っているものを見ると飴玉。
私が常日頃持っている勿怪ちゃん用の飴、確かに花子さんも持っていることは知ってたけど…嫌な予感。

口の中に飴を放り込んで、花子さんはまたゆっくりと顔の距離を近づけてくる。
そしてある距離でピタリと止まる。どちらかが首を傾けると唇が触れそうになる距離で。



「いただきまぁすっ」



少しの距離だったのに勢いよく触れたその唇は微かに熱を持っていてそのおかげで体内にあった熱が少し治まった気がしたのはきっと気のせいだ。

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作者名:ろい | 作成日時:2020年1月21日 0時

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