融解。【地縛少年花子くん】 (ページ1)

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1回目ページ1

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「願い事叶えて欲しいんデショ？なら、俺と一緒にいてよ！」

「一緒に？」

「そ、ずぅっとね」

＿＿＿＿＿

契約を結んだあの日、私は人生で一番後悔しているだろう。

ため息をついて旧校舎の3階女子トイレに入るとニコニコと壁に体重をかけていかにも待っていました、とオーラを出している花子さんがいた。

「あれっ？もう来たの？」

早く来ないと怒るくせに。
そう言いたくなるのを抑えてモップを手に取るとその手ごと後ろから掴まれる。

「ふぅ、」

「ひっ、！」

後ろは注意してたはずなのに。
花子さんはそのまま耳元に口を寄せて息をふきかけてきたのだ。

「あははっ、ほんっと飽きないなぁ」

「…………」

ジト目で花子さんを睨みつけると細い人差し指で口を押さえつけられ、そのままフニフニと触られる。

「契約したこと、後悔してる？
もう遅いよ、ずぅっと一緒だって俺ちゃんと言ったじゃん」

あの時は気付かなかった、まさかあの言葉の裏にそんな意味が込められてるなんて。

不敵に笑った花子さんは掴んでいた手をパッと離して私の頭に手を乗せた。

「じゃ、今日もお掃除ヨロシク」

「…わかってるもん」

べつに掃除が嫌なわけじゃない、その行動を見られるのが嫌なだけで。

私は元々、人に見られながら何かをするってことが嫌だ。だから今この状態も逃げ出したいくらい嫌なのだ。

「あんまり見ないでって…何回言えば分かるの？」

「ははー、まだ慣れないの？……後ろ、向いてて欲しい？」

「そりゃあできたらそうして欲しい、けど」

花子さんがこう言う時はロクな事がない。
ほら、今もずっとニヤニヤしてるし。

「うーん…そうだなあ。
ならさっ、可愛くお願いしてよ！できるヨネ？」

「……できな、」

「そんなのだーめ。俺、何するか分かんないよ」

どうやら私に拒否権は無いらしい。

でも可愛く、ってどうやって？そんな経験ないしよく分からない。
思わず掃除をする手が止まる。

「言っとくけど掃除が終わるまで帰らせてあげないからね、俺は別に好都合だけどっ？」

あ、これはガチなやつだ。と表情を見て悟る。

このまま何もしないのはただ時間が経って花子さんと2人きりという時間が長引くだけだしそれだけは避けたい。
私は花子さんの学ランの裾をキュッと握って引っ張った。

「……あっち、向いてて」

「やればできるじゃん、合格」

そう言って花子さんは出会って何度目かのキスを頬にしたのだった。