第四話 リーダー ページ5
明日からは人間と同じ生活をすることになったんだから、妖怪でいられる最後の一日を存分に楽しもうと思っていたのだが、残念ながら朔夜は朝早くからリーダーに叩き起こされてしまった。
朔夜が、せっかく気持ちよく石畳の上で寝っ転がっていたのに、と嘆くと、リーダーは決め言葉である問答無用を連発した。
朔夜も、舌打ちをして口をとがらせるという対抗を試みたが、リーダーにとっては痛くも痒くもない無意味な攻撃であった。
* * *
リーダーが、もくもくと上がる煙の中から、人間の姿をして現れた。
長い白髪交じりの毛を紐で結う、いかにも威厳のありそうな男性の姿である。
群れの仲間たちから、歓声があがった。
リーダーは群れの中でトップと呼ぶにふさわしい存在だ。
立場上のことだけではなく、群れをまとめて的確な指示を下す判断力と言い、この世界に存在する現象などに関わる豊富な知識と言い、妖怪として持っている能力の高さと言い、すべてをひっくるめて完璧な狐なのだ。
いくらリーダーを嫌っているとはいえ、朔夜でもリーダーの凄さは認めざるを得なかった。
彼を尊敬しない狐など、朔夜以外には存在しない。
人気のある狐の後に続いて人間に化けた朔夜は、他の狐の目には、当然のごとくかすれきって見えた。
朔夜の人間の姿は、決して醜くはない。
描いたように美しい眉、どことなく愛嬌のある大きな瞳、スッと筋の通った形のいい鼻、まるで銀色の粉末をまんべんなく振りかけたかのように輝いて見える、癖のない銀色の髪――むしろ、美少年と呼べるほどである。
しかし、そのことも逆に仲間たちの反感を買ってしまい、朔夜が人間に変化すると、ブーイングが飛んでくるほどの有様であった。
朔夜は気にしないという態度を貫き通してはいるものの、心の奥底では自分の人間の姿に不満感を覚えている。
神社の鳥居を二人だけでくぐった。
もう昼だ。
半分以上の仲間たちは、人間を騙そうと今日も張り切って出かけてしまい、他の狐の姿はほとんど見えなかった。
「……どこ行くの?」
朔夜はリーダーの背中にそう話しかけた。
リーダーは振り向きもせず、簡潔に答える。
「この区域にある役所だ」
「なにするの?」
「お前の転入手続きをする」
「難しいのか?」
「そうでもない。人間の転校手続きなんて、案外容易くできるものだ」
朔夜はふうん、と適当に返事を返して、一回も立ち止まってくれない足早の背中を必死に追いかけた。
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凍夢(プロフ) - おもしろいです!続きがきになるので続きをお願いします (2018年7月17日 0時) (レス) id: 00e413b96f (このIDを非表示/違反報告)
アナナス - 面白いです、続き待ってます。 (2017年7月4日 16時) (レス) id: c0c87a14c1 (このIDを非表示/違反報告)
闇風ヤク@アニオタ重症(プロフ) - 面白いw更新楽しみにしてる!!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆ (2014年8月10日 14時) (レス) id: a55c4f8740 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - なかなかです。続きが気になります頑張って下さい。 (2014年6月22日 18時) (レス) id: baa4070149 (このIDを非表示/違反報告)
ルーナレシア(プロフ) - これ面白すぎる(>∀<)こういうの好きなんですよ〜♪続きが楽しみです!! (2014年6月21日 9時) (レス) id: 107d52b62e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aru | 作成日時:2014年5月27日 23時