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ゆっくりと重い瞼を開けた。
すると、目に映ったのは見知らぬ白い天井。
窓からはぼんやりとした月が見えた。
次に、一定のリズムで脈拍数を知らせる、機械音。この独特の匂い。
私は瞬時に、ここは病院のベッドであると把握した。
そして、右手には温かい感触があり
指先まで辿ると、ベッドの傍に膝を立てる中堂先生が私の手を握りしめ自分の額にそれを当てている。
「中…堂…せんせ……」
か細い声で、あなたの名前を呼ぶ。
蚊の鳴くような声だったにも関わらず
先生は私の声が聞こえたようで、勢いよく顔を上げた。
先生の瞳が、少しだけ潤んでいるように見えた。
「ああ、良かった…目が覚めた…」
「A!良かった本当に…」
「Aさん、ここ病院です。分かりますか」
私が目覚めた事に気がついた、三澄先生
東海林さん、久部くんが次々に口を開く。
所長が眉根を下げて「背中の傷は浅いそうです。なので、一週間後には退院できるみたいです」と説明してくれた。
「…すみません、ご迷惑を…」
と謝ると三澄先生が「謝らないで。迷惑だなんて思ってないから」と微笑んでくれる。
「それに、Aの事めちゃくちゃ心配する中堂さんの姿も見れたしね」
「"早く起きてくれ、頼む"ってずっと手握ってるんだもん」
三澄先生と東海林さんは、その光景を思い出して笑っている。
それを聞いた私は、先生の方を見つめると
ふいっと目を逸らされてしまった。
私が薄く微笑むと、頭に先生の大きな手が乗せられる。
「本当にお前は救いようのないバカだな…」
また先生に悪態をつかれたはずなのに、
いつもより、その声色と表情は柔らかくて優しい。
先生は私の頭をそっと撫でて、その様子に
思わず私は
「…やっぱり私、先生が好きです」
とぼーっとした意識の中で、口走った。
…多分、半分寝ぼけている所為で、こんなにすらっと言えるのだろう。
「照れてますか、先生」
「うるさい黙れ」
私の頭を撫でる手が止まったので、そう尋ねると先生は私の髪をぐしゃぐしゃに掻き乱すのだった。
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時