・65 ページ21
.
翌日、ラボへ出勤するとオフィスのホワイトボードには父の解剖結果や、写真などが既にまとめられていた。
三澄先生や、東海林さん、久部くんが一緒になって穴が開く程に、それを見つめる。
「A！久部くんや神倉さんからお父さんのこと先に聞いちゃった。私達も法医学者として何でも協力するから」
私に気がついた三澄先生に、心配そうな眼差しを向けられ、私は深く一礼した。
「ありがとうございます」
そして自分のデスクに向かうと、すれ違いざまに中堂先生が私の頭に資料をぽん、と乗せる。
「鑑定書だ」
「昨日はありがとうございました」
解剖結果が書かれた資料を受け取りながら、検査技師である私が不在の中、解剖を進めてくれた事と
間違えて掛けてしまった電話の事に対し、お礼をした。
すると、先生は「礼を言うにはまだ早い」と言いながらホワイトボードの前に立ち、解剖の説明を始めた。
いつもは三澄先生がやる仕事だからか、中堂先生の姿に違和感を抱いていた。
「遺体の鼻と口周りには、微量の泡まつがあった。それと、窒息による臓器のうっ血具合から見て、死因は恐らく溺死。
肺は膨らみが少なく、殆ど水は溜まっていなかった。採取できた量はスプーン一杯程度。
死後硬直の状態から、死後一ヶ月以上は経過している。その間に水が抜けたかもしくは、最初から少量の水しか吸っていなかったかだな」
先生の説明を聞いた久部くんが何かを思い出したかのように、あ！と声を上げる。
「鈴木果歩さんの時もそうでしたよね、確か…」と、空中を目でなぞっていると三澄先生が人差し指を立てる。
「ドライドローニング！」
「それです、それ」
「あの時は死後CTがあったから、分かったけど今回は無いからねー。それに加えて死後一ヶ月以上経ってると判断も難しい」
三澄先生の言う通りだと、私と東海林さんは首を縦に振る。
「問題はどこで亡くなったかよね」と、東海林さんがぽつりと呟く。
「久部くん、この山岳地帯の地図出せる？」
私は向かい側のデスクにに座る久部くんに、PCで地図を出してもらうように頼んだ。
「はい、出せました」
数秒後、早くも久部くんのPC画面に
地図が広がる。
久部くんの背後に回り込み、地図を凝視する。
すると、遺体発見地点から、距離はあるものの一本の川があることに気がついた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった２人に甘い部分があるのか？とか思いながら更新が待ち遠しいです！ (2018年3月20日 6時) (
レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い！小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回！結末がどうなるのか気になりますが小説の最後（完結）も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい！ (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます！差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です！気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Soll(ソル) | 作者ホームページ：http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時：2018年2月18日 19時
