【中堂系】甘く檸檬のようなキスをして２

・46 ページ2

.




いつしか、東の空が明くなってきた。

太陽が顔を出し、この部屋にも朝日が眩しいくらいに光を差す。


ちょうど同じくらいに、最後のプレパラートの幼生の数を数え終わり長い欠伸を一つする。




「結論出たか？」


先生の問いかけに、昨日の事と眠さと疲れが相まって、無愛想に「…はい」と答えてしまう。


まるで機嫌を損ねた子供だ。



兎にも角にも、出た結果を警察へ報告に行かなくてはと、重い足取りで毛利さんの所へ向かう。


果歩さんは発見地点で亡くなった旨を伝え、再解剖の依頼をした。


「しかし、両親が解剖に反対なんですよ」

「そこをなんとか…」

「あのねぇ…あ、」



毛利さんのため息混じりの表情から一転
何かを思い出したように、指を立てる。


「死後CTなら、ありますよ」

「えっ、CTあるんですか！それラボに送って下さい」



そう言い残すと、私は警察署を後にし
急いでラボに戻った。


すでに三澄班の3人が、会議室でCTを確認している。

私もそこに混ざり、三澄先生が口を開く。



「肺の膨らみが小さいのは、死後5日経って水が抜けたからだと思ってたけど、違ったみたい。

これはドライドローニングの可能性が高い。
中でも顔面反射、エベック反射で意識を失ったと考えられる」


CTは果歩さんが亡くなった直後に撮影されたもので、肺が通常のサイズと変わらないという事は、水をあまり吸っていない。



久部くんがエベック反射に疑問符を浮かべていたので、説明する。


「顔面から水に落ちた場合、まれに発症するんだけど、顔面を水面で強打した時に意識を失ってそのまま死亡する」


「じゃあ…」と久部くんがある可能性を導き出す。


「何者かが、果歩さんを突き落とした」



…自ら飛び込んだという可能性もあるが、

今回は事件の前日に、鈴木さんと婚約指輪の代わりにネックレスを買いに行ったという話もあるから、久部くんの言う通り、他殺の線が濃い。



「中堂先生が、目撃者は"女の子が足から飛び込んだ"と言ってた。果歩さんは顔面から落ちたのなら、足から落ちたその人が目撃証言を作り上げた…犯人」



前に、先生が現地の海水を採取した際に
目撃者とも話した事を思い出した。


.

・47→←・45

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す