魔法仕掛けのダミー ページ7
光に漸く目が慣れ、少しずつ眩しさが引いていくと、先程何も無かった目の前には紛れもない自分が居た。
立ち姿一つ取っても、何だか垢抜けない動作に、不細工な顔。背丈、服に付いた粉塵すらも見た所同じ。
造り物なんて到底思えない
「どう? 凄いでしょ」
声すら出なかった。
ああ、確かに凄い。凄すぎる。たかが一つ魔法を見ただけ、それも自分に掛けられたわけでも無いのに。
『神』が命を創造する瞬間とは、こんなにも美しく、そして繊細で豪快な物なのか。
『初めまして。私は卯月遥。
その魔法仕掛けのアタシはアタシそっくりの作り笑いを浮かべ、アタシそっくりの高い声でそう言った。
「認めてくれた? 僕が神ってこと」
『私が貴方と言う事を』
にやにやと嗤うこの神様とやらを認めるのは癪だけど、滑らかに言葉を紡ぐ彼女を見ても、あくまで鏡映しにした自分を見ていると言う気分にしかならない。
「これで認められない人は感受性に異常があるとしか」
でしょう? と首を傾げ、少し大袈裟に地に跪いてみる。
「どうも」
ふふっと不気味に嗤い、アタシの下の方で二つ結びにしたのを手袋を嵌めた左手でくるくると弄ぶ。
暫くそうしていると、飽きたのか緑のシルクハットを胸に当て恭しくお辞儀をして、そのまま片脚でバレエダンサーに似た動作で一つ回り。
そしてまたシルクハットを頭に乗せるとダミーは跡形も無く、痕跡を一つも残さず消え去った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
西夏(プロフ) - 綺麗な文ですね！ (2018年8月11日 13時) (
レス) id: 66c6e8cd96 (このIDを非表示/違反報告)
ましら(プロフ) - やはり、うたちゃんの文章は、日本の匠に作られたとても繊細で、太陽の淡い光を受けて佇んでいる硝子ｻﾞ細工が如く美しいよ。うたちゃんの文章をありがとう！ (2017年1月30日 16時) (レス) id: 512c5a6245 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
