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優先すべきは ページ29

ここで目の前の鬼を逃せば恐らくより被害は甚大になるだろう。
だが、現在進行形で鬼に追われる人々も放ってはおけない

数秒思考を巡らせたAは次には迷うことなく鬼へ正面から立ち向かった
まっすぐと、装束の羽織を揺らし

「おお?鬼狩りさんはか弱き人間を見捨てるのかい」

地面に黒を伸ばす影が女目掛けて這い出てきたのを軽々と飛び避け徐々に距離を詰めていく
鬼は嬉々と空を仰いだ

__血鬼術 鳥影


瞬く間に木々の合間を縫って暗い、影の鳥たちが一斉にAへと向かってくる
その量の多さに圧倒されるより前にぶわりと桜が舞った

__舞の呼吸 荒舞 七五三切り

量で押されることなくその細腕に削ぐ和ぬ力強さでみるみるうちに影を切り裂いていく
鮮やかな手並みに鬼さえもほうと感嘆の息を吐く

「よいよい…!流石は長年鬼共に忌み嫌われる“出雲の阿国”と呼ばれることはある!」

鳥を蹴散らすと勢いのまま鬼の元へ駆ける女を迎え撃つように鬼の番傘が開かれる

__血鬼術 影の煩い

__舞の呼吸 式舞 三番叟

暴れるように飛び出した影が緩く尚且つ速くしなやかな曲線を描いた刀捌きにより打ち消され鬼の番傘の尖った部分が突くよりも先にAの蹴りが鬼の腹へと入った

靴底が地面を滑る音に鬼は内心驚愕していた。やはり見た目とは裏腹にあの娘には力強さがあると

後退した鬼に追撃しようと迫る女にすかさず己の蛇のような影が足をとる
絡まった影は身動き一つ取らせてはくれずそのまま影へと引き入れ始めてきた

(これは、まずい)

眉間に皺を寄せ状況を打開するために周囲を見渡した
刹那、目に入ったそれに力の限り腕を振るった


「ギャアアアアアア!!」

「!」

投げた日輪刀は目の前の鬼に、ではなくその後ろで人へ襲いかかる鬼の目へと突き刺さった
背後で喚く鬼に新月が気をとられた隙を突き、懐の扇で影を払う

足が影から抜けた途端振り返った鬼へではなく、これまた違う方向へ扇を投げると離れた場所から鬼の悲鳴が聞こえてきた

「………まさか君、他の人間を助けるためにわざと儂を蹴りおったな」

『うちは強情でなあ。どっち一つ言われてもどちらも選んでまうやわあ』

持ち手に糸を引っ掻けていたのかくるりと弧を描き扇が女の手元へ戻ってくる
譲れない強い意志が確かにそこにあった

「…くくく、なかなかに骨のある!」

呆然と女を見ていた鬼の好戦的な顔つきに臆することなく突っ込むのは無謀か、それとも

夜逃げ→←鬼、笑う



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蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月6日 10時

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