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鴉の案内 ページ18

ひらり、一枚の黒い羽が宙を舞い冨岡の半々羽織の肩へ止まった

「…………」

反対側で鎮座していた己の鴉が飛ぶと同時に冨岡は肩へ舞い落ちた羽へ手を伸ばす
漆黒に染まる羽は太陽の光を受けてより艶やかなものだ

己の鴉が頭上を飛ぶ後を追えば鴉が停まった木の枝には先約の鴉
自身の肩へ羽を落としたのはあの鴉だろうと推測するには容易い

「……お前は」

そこでふと、鴉の下へ寄ってから見覚えがあることに気づく
数日前、雪の降り頻る山中に女人の頭上を旋回し、彼女の肩に停まっていたあの鴉。

主人の姿が見えぬが彼女の鴉で間違いない。鴉の片目が青く空を模しているのが何よりの証拠だ

鴉はバサリと羽を広げ木の枝から飛び立つと冨岡の前を悠々と低空飛行をしだす
一瞥するように一度視線を寄越したのだから恐らくは着いてこい。そう言っているのか

冨岡の鴉が青眼の鴉を追うのだから冨岡も案内役の後を追わずにはいられなかった


程無くして鴉は森の中へを突き進む。その先、僅かに漂う鬼の気配を察知するや否や冨岡は地を蹴る

(木々に阻まれ日が遮られているせいか…)

鬱蒼と繁る木々の高さは日差しさえも凌ぐ
陽の光を嫌う鬼にとっては絶好の場所だ

刀へ手を掛けて狙いを定める
姿は未だ見えぬ、代わりに視界を掠めたのは

深緑に映える赤__


「!」

華開いた赤に瞠目したのも束の間、突如丸い物体が横入りしてきたので冨岡は日輪刀で弾く

ごろり、地面に転がったのは瞼を伏せ、悟りを開いたように安らかな顔をした生首
その額から生える角から人間ではないのは明白だ

「……これは」

何故鬼の生首が飛んできたのか。答える代わりに惨状が物申す
彼方此方、叢の合間に見える鬼の首はある一点に集中している

赤い番傘は彼等の血を連想させるが、くるりと舞い踊る姿は狂気により美を強調させる


『よう眠っとぉくれやす』


たった一瞬、その刃が番傘の柄から引き抜かれ木漏れ日により反射した刀身を見事なまでに鬼の首へ振るった女の舞に冨岡は魅入った

その美景は鬼を狩る天女の如し。
遠い噂、出雲の阿国に救われた旅芸人の詩の一節である

相反する意思→←加護



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蜜柑(プロフ) - あいうえおさん» 誤字指摘ありがとうございます…まさか主人公である彼の名前を間違えるとは申し訳ありません…… (2019年6月24日 23時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すいません。「炭次郎」じゃなくて「炭治郎」ですよ。 (2019年6月24日 22時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます…!やよいさんの作品も閲覧させていただいているので作者様からそう言ってもらえて嬉しいです! (2019年5月20日 17時) (レス) id: f7e2178304 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - はあ、、もう面白すぎです。。文才神がかってます。。大好きです。 (2019年5月20日 0時) (レス) id: 7302d83944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月6日 10時

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