嘘つきの私と最後の一年六時間目 (ページ21)

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彼女の時間・二時間目ページ21

それは突然の出来事だった

「……え」

手にしていた携帯が音をたて床へと落ちていくのさえ気にならないほどに、思考が奪われてしまう

暫し立ち尽くす自身の体を叱咤し床に落ちた携帯を拾い上げる
見間違いであることを祈るように画面を確認するが、そんな願いは意味がない

天宮Aからのメッセージアプリのグループに宛てられた一言

A彼女を助けたいならば今夜9時までに君たちの担任と来なければ殺す

添付された写真に写るのは悲惨なまでに血を流し椅子に縛られた彼女の姿

●●●

「駄目だ、誰も天宮と連絡がとれない」

すぐさま全員で殺せんせーのいる旧校舎へと集合し、状況を把握するけれどあの一文は嘘なんかではないこと、それだけが分かる

「私たちを誘きだす罠…にしてはおかしな話よね」

「? どういうことだよ」

「狭間さんの言う通りです。相手は予定時刻を指定しているものの、場所までは伝えていない」

「俺たちに探してほしいんだろーね」

隣のカルマ君が苛立ちを隠せないと言いたげに眉間に皺を刻む

突如降りかかったあの天宮さん誘拐事件

誰もが動揺し動けない中、殺せんせーは一人考えるように無言を貫いていた

「あの、1つ良いでしょうか」

どこか申し訳なさそうに発せられた声。発生源は片岡さんの携帯、つまりは律から

「天宮さん捜索の手がかりになり得そうな情報に1つだけ、心当たりがあります」

「え…」

「本当か律!?」

「はい。天宮さんとの約束を破ることになりますが…」

やむを得ないとしても律からしてみればそれは苦しいもの
けれど友達を助けたいという想いに覚悟を決め、クラス全員のスマホに送られた1つの人物のデータ

「これって…」

「夏休みの肝試しにAさんからこの人物の情報を集めてほしいと頼まれていました」

藤ノ木弔

いかにも屈強な容姿をした男性の表情は氷のように凍てついていて、生気を感じさせなかった