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『ゼノさんー!』
「…やかましい」
名前を呼んだのと同時に、がらりと動いた瓦礫の中からゼノさんが顔を出した。い、生きてる…!おじいちゃん生きてるよ…!と感激しながら駆け寄ると、疲れた顔をしながら瓦礫を横に放ったゼノさん。
少し離れたところではターゲットの男も生きていたようで、瓦礫を避けて姿を現した。
『ゼノさん…無事で良かったです…。もうあの小言が聞けなくなると思ったら切なくて…』
「そうかい。じゃあ帰ったら暗殺術を基礎から叩き込んでやるわい。なんじゃあの走りは」
『oh.....』
墓穴を掘ってしまったようだ。
それは勘弁してほしい…。
「…随分と慕われているね」
「都合がいい女じゃからの」
『ひどい言われようだ…』
くすりと笑うターゲットと軽口を叩いたゼノさんは、本当はすごく気が合うのではないだろうか。服についた砂埃を払い、ターゲットに背を向けたゼノさん。
「殺らなくていいの?」
「…ワシらの依頼人は十老頭。その依頼人が死んでしまった以上お主はもうターゲットではないのでな」
「そう。意外だな。もうないよ?こんなチャンス」
流石にこちらの依頼人が誰かは知っていたけれど、イルミさんがターゲットに十老頭の暗殺を依頼されていたなんて、私は聞いていないよ…!
イルミさんが十老頭を始末するのなら、わざわざ戦わなくても依頼人はいなくなっていたのに。損得勘定なしで、命を懸けてまでただ忠実に自分たちの依頼をこなそうとしていたシルバさんとゼノさんの意識の高さったら…賞賛を通り越してドン引きである。
「ほれ、帰るぞA」
『交通機関を使いましょうね…』
あと、こうして手を差し出すゼノさんはたまに冗談きつい。ここから三人でゾルディック家まで帰ったら、多分血反吐くらいは吐くからね…!それに私まだこの街にいますから!
「…A?」
ゼノさんが、小さく「あ」と声を漏らした。
私の名前を呼んだのは、ゼノさんでもシルバさんでもなく、ターゲットの男。振り向くと、漆黒の瞳と目が合う。
「……久しぶりなのは、君もか」
ーーこの部屋に入り、一目見た瞬間から分かっていた。
以前フラッシュバックした一瞬の静止画が、少しずつ動きだす。真っ赤に燃えて焼け落ちる屋敷を背景に、血と涙に濡れた私の頬を拭った。
「"もし、君がまた会う日まで生き延びていられたなら。その時は迎え入れよう、蜘蛛に"」
嗚呼、思い出した。
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うさぎもち - 私、この作品すっごく好きです!!!夢主ちゃんの性格もめっちゃ好きです! (11月22日 16時) (レス) id: 6ed501a3ba (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - パスワード教えてもらいたいです!この作品の続きが気になりすぎてねむれません! (2020年4月29日 5時) (レス) id: be75996472 (このIDを非表示/違反報告)
ogofumi(プロフ) - 最近、H×Hにはまってこの作品を見つけ、虜になりました。この作品の続編にパスワード保護がかかっているのですが、パスワードって教えてもらえませんかね…?凄く凄く続きが気になります! (2020年4月16日 14時) (レス) id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - 紅蘭さん» 不安定なペースですが、勿体ないお言葉までありがとうございます…!へへへ残念な性格ですが、そう言って貰えて主も喜んでいると思います。これからも頑張ります(っ'ヮ'c) (2017年5月27日 1時) (レス) id: d2e199629a (このIDを非表示/違反報告)
未確認歩行物体(プロフ) - サメ子さん» コメントありがとうございます(*´∇`*)そこらへんはしっかりブレない主です!ww ハイキューの方も!そう言って貰えて本当に嬉しいです!これからもよろしくしてやって下さい…!()応援ありです! (2017年5月27日 1時) (レス) id: d2e199629a (このIDを非表示/違反報告)
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