【HUNTER×HUNTER】運命とは複雑なものである。

106 ページ17

・




あれから数日。



『も、もしもし』

「おいA！ 今どこいんだよ！ いっつも勝手にどっか行きやがって！」


キルアにメールでしばらく戻れないことを伝えると、返事代わりにかかってきたキルアからの電話に携帯から耳を離した。これもまぁわりかし定番と化して慣れてきたやりとりなのだが、いてもいなくても変わらない私に何故そんな怒るのか謎すぎる。
謝りながら事情を隠す私の横で「大変だな」と皮肉るクロロさんに更に胃が痛んだ。

飛行船に乗り、船に乗り。私と依頼人であるクロロさんは真東に向かって進んでいた。最初にあの切り立った岩山からとりあえずいける距離だけ東までテレポートした際に、彼の分で能力の反動が2倍になることを忘れて吐血した記憶はまだ新しい。


「……島が見えてきたな」

『ほんまや…』


念能力が使えなくたってそこらの人間よりは500倍強いクロロさんに、もはや私はただの付き人状態。まあ、私が彼に付き合っている理由は依頼だけではなく、複雑な過去の関係に少しでも思うところがあるからなのだけど。それは恐らく彼もだろう。
あとからイルミさんに聞いたけど、この依頼は彼がわざわざ私を指名したらしい。初めての指名だね、って全然嬉しくないです。

見えてきた大きな島に、船のエンジンを止めて上陸した。ここに彼の探す除念師がいるわけか。万が一すぐに見つかって除念しそうになったら逃げなきゃな…。


『！』


海岸から木々が生い茂る島の中に足を踏み入れようとして、立ち止まる。なんかめちゃくちゃ強そうな人出てきた。依頼内容に護衛も含まれているため、慌てて隣を歩くクロロさんの前に出る。ていうかいざと言う時に逃げれないのでポケットに手をしまわないでください…！


「ーー漂流者…じゃないよな。迷い込んだか？」


私たちを見てそう言った、背の高い厳つい男。ここの住民かな？警戒こそはしているけれど、攻撃を仕掛けてくる様子はない。にこやかに笑みを浮かべて、こちらの出方を窺っているのだろうか。なにはともあれ話が通じそうでよかった。とりあえずこの島に用があると伝えると、なにやら正しい島への入り方があるらしい。


「悪いが用があるのなら、そっちの方法で入島してくれ」


レイザーと名乗った彼がカードのようなものを取り出し、私たちに出ていってもらうと宣言した。彼がなにが呪文のような言葉を読みあげるとそのカードが反応し、恐らく彼の念能力によってその場からどこかに飛ばされた。



・

107→←105

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す