7話 ページ9
後日、私はある研究室の前にいた
二度ノックする
当然のように返事はない
「Aだ、入るよ」
声を掛けても、やはり返答はない
私はそれに溜息を吐いた後、扉を押した
部屋に入ると、物が散乱してるのが見える
私の部屋より酷いな
私でももう少し片付けはする
そんなことを思いながら、私はこの部屋の主、ルシファーへと声をかける
「ルシファー。今、時間あるかい？」
「ない。それと勝手に入ってくるな」
彼はフラスコを手に持ちながら言った
いつもより声が低い
今日は機嫌が悪いようようだ
昨日の学会がさぞ退屈だったのだろう
それか他の研究者から何か言われたのか
まあ、こういう時の彼はほっとくに限る
だがこちらも仕事だ
さっさと聞いて終わらせてしまおう
時間はないと言われたが、私は気にせず報告する
「＿＿＿地域の星晶獣が凶暴化しているらしい。それに触発され、獣たちの動きも活発化。何か心当たりは？」
彼は黙々と研究を続けている
どうやら原因を考えているらしい
彼は必要なことはきちんと聞いている
無駄な話さえしなければ、彼が怒ることもないだろう
「ちなみに周りの環境状態は特に異変を感じなかった。今朝確認したからそれは確かだ」
「……なるほど、わかった。後で調べておく」
「ああ、ありがとう」
背を向けたまま答える彼に、短く礼を言う
用事もないので立ち去ろうとしたが、その前に彼が引き止めた
「おい待て」
「なんだい？」
「おまえに天司を造ってもらいたい」
「……天司を？」
「ああ、天司の造り方はもう知ってるだろう」
「……まあ、できないことはないけれど」
私は歯切り悪く答える
何度か彼の実験を手伝っている
そのおかげで天司を造ることは難しくないだろう
だが、私に造らせる意図がわからない
彼は続ける
「おまえが最高傑作だと言えるようなものを造れ」
「……そんなこと言われてもなぁ。役割は？まず、それを教えてくれないと……」
「役割はない」
そう告げられ、私は考える
天司には生まれた時から役目が与えられている
それがないとすれば……
「……スペアか」
「おまえと話すのは楽でいい」
「それは光栄だ」
珍しくルシファーに褒められた
その事実に少し嬉しくなる
……プログラムのせいとは言え、我ながら単純だ
「わかった、早速取り掛かるよ」
「楽しみにしている」
そう言って笑う彼に、私も笑った
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うさ - 続き楽しみにしてます。 (2019年6月30日 18時) (
レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
東雲ノア(プロフ) - 表現、話の内容、書き方全てがとても好みです。久し振りに素敵な作品に出会えました。陰ながら応援してます。 (2019年4月5日 12時) (レス) id: be86295bcb (このIDを非表示/違反報告)
こまこ - 最高です。 (2019年3月24日 4時) (レス) id: 95e04e1a30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちもち | 作成日時：2019年3月14日 13時
