鳥籠の楽園

19話 ページ21

「なんでだろうねぇ」

彼女はそう言って、いつものように微笑んだ
そんな彼女の姿を見て、顔を歪める

意味がわからない
なんで君は、いつも

何か言いたいのに、喉が引き攣って声が出ない

胸の辺りがひどく痛む
コアの軋む音が聞こえる

……何故、こんなに動揺してるんだ

彼女はオレたちの敵だ
殺して当然だろ？

そう思い、冷静さを取り戻す
目の前の彼女を見ると、既に彼女は意識を落とした

オレが仕込んだのは睡眠薬だ

毒を仕込むこともできたが、それはあまりに呆気ない
どうせなら自分の手で殺してやりたいと思っていた

この綺麗な顔を、苦痛で歪ませてやりたいと

だが、正面から戦えば戦闘が長引く

彼女はオレやルシフェルと同時期に造られた個体だ
普段は室内に籠っているとはいえ、その戦闘能力は計り知れない

彼女の本気を見るのも楽しそうだが、時間がないため諦めた

ああ、でも失敗だな
これだと苦痛に歪む顔を見ることができない

やはり素直に毒を仕込んだ方が良かっただろうか
だが、今更こんなことを考えても遅い

時間がないのだ
もうすぐ、反乱が起こる

その混乱に乗じて、身を隠さなければいけない

だからさっさと彼女の首を刎ねてしまおう

そう思い、彼女の首に刃を当てる
そのまま彼女の首を引き裂こうとするが、

「どう、して」

体が動かない
しまいには指先が震える始末だ

オイオイ、冗談だろ

何を今更怖がっているんだ
こんなこと、今まで散々してきただろ？

頭では冷静に考えれるが、体が拒絶している

信じられない
だってこんなの、まるで、

そこまで考えて、諦める

彼女の首から刃を離す
それから自分に対して、大きく溜息を吐いた

……思ってた以上に、彼女に毒されていたみたいだ

やっぱり、睡眠薬を使うのは失敗だったな
こんなことになるなら、さっさと毒薬を仕込めば良かったのだ

そんなことを思いながら、オレは呟く

「……オレ、結構本気で君のことが好きだったみたいだ」

そしてオレは、彼女の額にそっと口付けた

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