10話 ページ12
「……さて、どうしようか」
私は自室で、ぽつりと呟く
ルシファーに言われ天司を造ることになった
だが、全くと言っていいほどビジョンが浮かばない
しかもテーマが漠然としすぎている
最高傑作、と言われてもこれだと言うものが思いつかない
私は一人で悶々と悩んでいると、扉が二度ノックされた
「ルシフェルだ。入室してもいいだろうか」
珍しい客人だ
思わぬ来訪に、笑みが零れる
「どうぞ」
応答を聞き、彼は扉を開く
私は穏やかに微笑み、彼に向けて言う
「お久しぶりです、天司長様。今日はどういったご用件で?」
「……A、敬語はやめてくれと以前言ったはずなのだが」
いつも無表情の彼の顔が、少し歪む
私が敬語を使うのがよっぽど嫌らしい
正直私も堅苦しいのは苦手なのだが
私は苦笑して、彼に言う
「組織を統率するためには必要なことです」
「だが今は二人だ。私はAと、兄妹として話したい」
真摯な目で見られ、私はまた苦笑する
彼のこの目に弱いのだ
私は諦めて、いつもの口調に直した
「はいはい、わかったよ。けど、本当にどうしたんだい?ここに来るということは、何かあったんじゃないのか?」
「いや、今日はただの視察だ」
「視察?君なら全ての天司たちの動向を把握できるだろう?」
天司長の権限で、見ようと思えば見れるはずだ
わざわざここまで降りてくる必要はない
彼は普段、カナンという場所で仕事をしている
そこは天司長以外、入ることは許されない
入ろうと思えば入れるのだが、カナンに到達するまでが苦痛だ
『騎空士』という職業の人間が何度か挑戦していたが、誰もそこへ到達したことはない
地上の国では『天国の門』とも呼ばれているらしい
なんとも皮肉な異名だ
私の問いに、彼は淡々と告げた
「……実はそれは建前で君に相談があって来たんだが、迷惑だっただろうか」
彼の発言に、私は驚く
昔の彼なら、絶対に私に相談事はしなかっただろう
何せ彼はいつも完璧だったから
そんな完璧な彼でも、悩み事があるらしい
彼の瞳には不安げに揺れている
私はそんな彼に満面の笑みを浮かべ、
「大歓迎だ」
そう告げた
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うさ - 続き楽しみにしてます。 (2019年6月30日 18時) (レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
東雲ノア(プロフ) - 表現、話の内容、書き方全てがとても好みです。久し振りに素敵な作品に出会えました。陰ながら応援してます。 (2019年4月5日 12時) (レス) id: be86295bcb (このIDを非表示/違反報告)
こまこ - 最高です。 (2019年3月24日 4時) (レス) id: 95e04e1a30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちもち | 作成日時:2019年3月14日 13時