プロローグ ページ1
ドサリ、と顔に本が落ちる
視界が暗くなる
身体も重い
顔に乗った本を片手で退かすと、薄暗い天井が見えた
ここは私の創造主に割り当てられた自室のようなものだ
自室、といってもほぼ物置なのだが
私は上半身を起こす
身体に乗っていた本が、バサバサと落ちる
ある本を取ろうと手をかけたら、他の書物まで一緒に落ちてきたのだ
で、そのまま私は本の下敷きになったというわけだ
これでもう何回目だろうか
溜息を吐くと同時、自室の扉が開いた
「おーい、A。今すごい音がしたが……」
声の方へと視線を向ける
するとそこには白い服を纏った美丈夫が立っていた
彼の名はベリアル
私と同時期に造られた天司だ
引きこもっている私の数少ない友人と言えるだろう
彼は私の姿を見て一瞬固まった後、困ったように笑った
「君、また本の下敷きになってるのかい？」
「……ああ、ベリアルも暇なら直すのを手伝ってくれ」
「しょうがないなぁ」
彼はそう言って私の元に近づき、落ちた本を拾い始める
私も立ち上がり、片付けを始める
彼はいつも片付けを手伝っているせいか、ほとんどの書物の場所を把握している
いちいち支持を飛ばさなくてもいいので非常に楽だ
黙々と書物を片付けていると、ベリアルが声をかけてきた
「見たことのない書物だ。これはどこに？」
彼はそう言って、私に本の表紙を見せてくる
私の探していた心理構造の本だ
それを見て、私は答えた
「それは今から読むものだ。私の机に置いといてくれ」
「ふぅん……。珍しいね、Aがこんなの読むなんて」
「『知』を司る天司として、いろいろ知っておいた方がいいだろう」
私たち天司には様々な役割がある
私は『知』を司る天司だ
だから私は他の者よりも記憶力が良く、理解力も高い
といっても、造られたばかりであまり多くのことは知らないが
「心理構造、ねぇ」
彼はそう言って、本の表紙をなぞる
私はそんな彼に言った
「気になるのかい？」
「ああ、とても」
「なら、しばらく貸してあげよう」
私の言葉に彼は目を丸くした
それから聞いてくる
「いいのかい？今から読むんだろう？」
「他の仕事が残ってるからな」
「君、仕事があるのにこれを読もうとしてたのか？」
「多少の娯楽は必要だろう？」
私が笑うと、彼は呆れたように笑った
そんな彼に対して続ける
「片付けを手伝ってくれたお礼だ」
「ありがとう」
彼は嬉しそうに微笑む
その瞳に映る彼の思惑には、微笑みだけを返した
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うさ - 続き楽しみにしてます。 (2019年6月30日 18時) (
レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
東雲ノア(プロフ) - 表現、話の内容、書き方全てがとても好みです。久し振りに素敵な作品に出会えました。陰ながら応援してます。 (2019年4月5日 12時) (レス) id: be86295bcb (このIDを非表示/違反報告)
こまこ - 最高です。 (2019年3月24日 4時) (レス) id: 95e04e1a30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちもち | 作成日時：2019年3月14日 13時
